内容説明
ゾロアスター・イエス・仏陀の思想を綜合し、古代ローマ帝国から明代中国まで東西両世界に流布しながら今や完全に消失した「第四の世界宗教」。「この世」を悪の創造とし全否定する厭世的かつ魅力的なその思想の全貌を、イラク・イラン、中央アジア、北アフリカ、ヨーロッパ、中国に亘りあまねく紹介する世界初の試み。
目次
プロローグ マーニー・ハイイェーとマーニー教
第1章 マーニー教研究資料の発見史―西域の砂漠から南シナ海沿岸の草庵まで
第2章 マーニー・ハイイェーの生涯―「イエス・キリストの使徒」にして「バビロニアの医師」
第3章 マーニー・ハイイェーの啓示―現世の否定と光の世界への帰還
第4章 マーニー教の完成
第5章 マーニー教教会史1―エーラーン・シャフル
第6章 マーニー教教会史2―ローマ帝国
第7章 マーニー教教会史3―ウンマ・イスラーミーヤ
第8章 マーニー教教会史4―中国
エピローグ 近現代の「信仰」としてのネオ・マーニー教
著者等紹介
青木健[アオキタケシ]
1972年生まれ。東京大学文学部卒業、同大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。現在、慶應義塾大学言語文化研究所兼任所員。専門はゾロアスター教、イラン・イスラーム思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bapaksejahtera
10
マーニー教がグノーシス的な混淆宗教という感覚は誤りのようで、開祖マーニーは「思想的には教祖一個の天才によって支えられた宗教」を構築、自らその神話や教義書の著述、それらを荘厳する絵画や宗教儀軌、組織まで作り上げる。文語伝統のない言語での立教は独自の文字まで開発する。3世紀のこの種人物にしては例外的に生没年まで判明している。キリスト教の神義論は必然的に二元論を生み出す。当初ユダヤキリスト教に触れた開祖は、ペルシアの地で対したゾロアスター教に今日むしろその眞面目とされる二元論を齎したとの著者の見解は妥当と思う。2021/06/01
いとう・しんご
9
読友さんきっかけ。3世紀に西アジアで生まれて世界史の渦の中で広がったり縮んだりしながら最期はウタカタとなったマーニー教のお話。初代キリスト教やゾロアスター教との関係など、面白いお話が一杯。分かりやすい構成にほどよいユーモアって読みやすかったです。この著者の他の本も読んでみたいと思いました。2024/11/13
ジュンジュン
7
面白い。キリスト教をベースに、ゾロアスター教、仏教のいいとこ取りして作り上げたパッチワークのようなマニ教もだけど、それ以上に読み物として分かりやすいし面白い。世界三大宗教(キリスト教、イスラーム、仏教)に駆逐されて400年、ここまで復元できたことにまず感動。次にローマ帝国でキリスト教と、ペルシアでゾロアスター教と、中央アジアで仏教と覇を争ったスケール感に感動。最後はカリスマ創業者のもと社業を拡大した挙句、パタッと倒産する会社の悲哀をみるようで切ない。2019/10/30
mstr_kk
5
やっぱりこの著者の本は面白いです。マーニー・ハイイェーの人生(その父の奇人ぶり)も面白いし、マーニー教の世界観も面白い。2024/11/07
竜王五代の人
5
知識層に受けられ、トップ取りを狙う新興宗教「マーニー教」の成り立ち・教義・歴史まで網羅した面白い本。この先生にしては文章は真面目(とはいえ、イエスの義父ヨセフなど及びもつかない教祖の父の変人さの表現などは走っている)。こうしてみると、現代の新興宗教の特徴(理論が先行しているとか、冠婚葬祭に手薄だとか)を備えているような気もする。浸透はするけどメジャーにはなれないところも。マーニーの文才・画才とも優れたところは教祖としてたいしたもの。2022/12/27