講談社選書メチエ
文学の誕生―藤村から漱石へ

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  • サイズ B6判/ページ数 248p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062583787
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0395

内容説明

日露戦争は、日本の近代文学が成立するうえで、大きなターニングポイントになった。「日露戦後」文学とは、どのようにつくり出され、社会に定着していったのか。島崎藤村、国木田独歩、田山花袋、小栗風葉、夏目漱石という、当時を代表する五人の作家に焦点を当て、それぞれの評価の転変を詳細に跡づけながら、近代日本の歴史の中で、文学が文学となった時を考証する、俊秀の鮮烈なデビュー作。

目次

序章 文学の新紀元―日露戦後新文学の勃興
第1章 技術批評を超えて―島崎藤村『破戒』の表層と深層
第2章 “自己表現”の時代―“国木田独歩”を読む“私”
第3章 読むことの規制―田山花袋『蒲団』と作者をめぐる思考の磁場
第4章 文学の“裏切り”―小栗風葉をめぐる・文学をめぐる物語
第5章 軽文学の王・夏目漱石―あるいは明治四十年、文学の自己同一化
終章 文学のための物語―文学概念・文学史

著者等紹介

大東和重[オオヒガシカズシゲ]
1973年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。学術博士。専攻は日中比較文学。近畿大学語学教育部講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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サイバーパンツ

12
島崎藤村、国木田独歩、田山花袋、小栗風葉、夏目漱石、五人の作家の思想と当時の文壇評価(批評や主義を巡る議論など)を追うことで、「日露戦後」文学がどのように成立・定着していったのかを問う。作者の態度と作品のテーマの繋がり、作者-作品-読者の図式、〈自己表現〉性の有無など、「日露戦後」文学では、作者の位置を巡る議論を中心として、新しい文学概念が検討されたという感じか。文学は文脈によって形成された仮構と知ることで、ありえたかもしれないもう一つの文学の可能性を仮想できるというのにはロマンがある。2018/02/01

きつね

12
文学史の一大画期に何が起こったのか。書き、読み、論ずるパラダイムの変化を資料の博搜から丁寧に浮かびあがらせる。文学史に名を残せたものと消えたもの、両者をわけたのは必ずしも「作品」にのみ帰されるものではない。そのことが独歩享受史の不思議や、藤村享受史と花袋享受史の交錯などの実例から明らかにされる構成であるから、作品本文を読み解き/読み替える傾向の論文を読みたい向きには不満もあろうが、そういう人にこそ是非読んでもらいたい本でもある。久しぶりに本を付箋と書き込みで埋める喜びを味わった。あとがきも良い。2013/06/03

遠藤三春

2
藤村、独歩、花袋、小栗風葉、漱石達の創作の思想と当時の文学批評、また彼らを取り巻く文壇の文学概念、その変化。明治の文学史は「自我発展」で共通して認識されている。む、難しい…泣きたい。2011/09/11

aabbkon

0
片上天弦が,『蒲団』に対して「作家と作品との距離がとれていない」としながら,人格主義あるいは生命主義の立場に立ったのは,なぜだろう。片上は変わったのか,変わってないのか。2014/06/21

MJ

0
「作家たちに公平なチャンスを与えるには、作家たちに下された審判の拠って立つ規則を白日のもとにさらし、その規則が歴史的に人為的に形成されたものであることを明らかにし、審判のやり直しを求めればよい。」 文学の定義や評価方法は不変のものではなく作品と批評の繰り返しで形成されてきたことを具体的に示してくれるので非常にわかりやすい。教科書の載るような作家が時代の潮流に乗って評価された一方で、良作を残しても時代遅れ、非文学扱いの作家もいる。文学史の流れを理解しつつ、有名かどうかだけで選ばずに好きな作品を楽しみたい。2023/10/22

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