出版社内容情報
日露戦争から、戦後の日中国交正常化まで。君主国から共和国へというプロジェクトを進行した中国の歴史を補助線に描く日中関係史。日清・日露戦争以後、日中戦争を経て、戦後の日中国交正常化に至るまで。
ともすれば日中対立の時代として描かれる二〇世紀中国の歴史を、俯瞰して描く力作。
清朝の時代の「君主国」から、西欧的な国際関係に中に組み込まれ、「共和国」として生きるプロセスとは、どのようなものであったか。そこで生みだれる日中関係の複雑な様相とは。
日露戦争から日中国交正常化までを、「憲政」=共和国への道という中国の歴史を補助線として、国際関係の中で描く。
序章 中国の夢と憲政の夢
第一章 共和国の誕生
憲政の船出
第二章 共和国の苦悩
袁世凱と孫文/北京政府と第一次世界大戦
第三章 共和国の抵抗
帝国日本の侵略と憲政の準備
第四章 共和国の復活
日中戦争と抗日体制/米ソ・国共対立下の憲政
第五章 共和国の刷新
文化大革命と共和国の立て直し
終章 日本中国観と中国の憲政史
中村 元哉[ナカムラ モトヤ]
著・文・その他
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
18
君主国から共和国へと転換した中国の近現代史を、憲法と憲政の視点を加味しながら、対立と共存の日中関係の歴史とあわせて描いた作品。中国は清末から中華民国、そして中華人民共和国へと至る歴史において、憲政の希求と、憲法学の発展の歩みがあるという、これまであまり大きくクローズアップされなかった憲政の歴史を詳らかに解説している。憲政に逆行するような現代の中国共産党にとっては、あまり触れてほしくないテーマであろう。戦後の中国分断から、中華ナショナリズムの一体化を図るためにも憲政が模索された面も興味深い。2017/08/16
かんがく
12
タイトルの日中関係史よりも、副題の共和国としての中国の方がテーマに近い気がした。日清日露戦争以降の、中国における憲政を目指す動きが中心に据えられているのは新奇で面白い。辛亥革命〜国共内戦のゴチャゴチャした中国情勢が整理されており理解の助けとなった。2020/07/23
さとうしん
10
「憲政への夢」を軸に描く中国近現代史。民国期に美濃部達吉の学説が高く評価されるなど、この方面で意外に日本の影響が強かったことや、「思想統制」が取り沙汰されがちな人民共和国の時期も含めて、憲政に関して様々な方向性が模索されていたことをまとめる。終盤に中国と台湾に挟まれた第三極としての香港の役割について触れられていたが、そのような役割は中国の改革開放と台湾の民主化によって希薄化しつつあるのではないかと思った。続編として現代台湾での憲政の展開、あるいは日本も含めた東アジア全体の憲政史が望まれる。2017/09/30
まえぞう
6
東アジアの近現代史第2弾は、清朝末期から文革終了直後までの中国史を、憲政史という側面からとりあげたものです。このくらいの時期に差し掛かると、自分の人生とも交差する話しも出てくるので大変興味深く読みました。次の第3弾からは朝鮮半島の歴史に入っていきます。2017/07/31
Blair
3
近年、ナショナリズムの高揚や相互理解の欠如という問題が浮上しつつあり、日中関係も例外ではない。長らく中国では、本書で使われているような「憲政」という言葉に慎重的で、主流の政治的言語でないことは、中国の憲政概念を研究して分かった。もっとも、清末・民国期では当時の憲政志向の高まりにより、一般的に使われていたわけだが、人民共和国成立以後、憲政概念に関する論争が巻き起こってきた。それは、中国における民主主義を考えることにも繋がるが、その複雑さに直面する前に本書を読んで今一度歴史を再確認することが最善だと思う。2022/09/14