出版社内容情報
事実と虚構、倫理と経済の間で醸成される日本人の心性。元禄から平成へ、時空を超えて紡がれつづける物語の中に歴史の魂を呼び返す。本書は野口武彦氏による『忠臣蔵─赤穂事件・史実の肉声』(ちくま新書、現在はちくま学芸文庫)、『忠臣蔵まで』(講談社)に続く一冊です。『忠臣蔵』において野口氏は事件の発端から終結まで、後世の潤色を取り去り、史料の叢から元禄の人間ドラマをよみがえらせることに成功しました。また『忠臣蔵まで』では赤穂事件を成立させた武士の行動原理(エートス)の帰趨について、尋常ならざる洞察が示されました。
そして本書に至って野口氏はこう言います。
「忠臣蔵をレンズにして眺めると、ただ元禄時代という過去の歴史の一齣だけでなく、日本に流れる時間のなかに住まう歴史の精霊(デーモン)の姿を正視することができる。元禄人に目を据える。と、元禄の死者たちもひたと見返してくる。その眼差しは、同時代だからこそかえってものを見えなくする死角を突き抜けて、現代の迷路をくっきり照らし出すにちがいない」
すなわち、いまなお日本人の心性の根底にあるものを、忠臣蔵という「虚構」の享受、語り口そのものを通じて洗いなおそうとする試みです。そのとき浮かび上がってくる普遍にして不変のものが「貨幣の専権」であることに読者は驚くはずです。
本書は、いわば野口版「忠臣蔵三部作」の掉尾を飾るものとなります。
元禄の春
新人類の武士道
殿中松の廊下
赤穂浅野家の危機
主家滅亡
総員、江戸に潜入せよ
吉良邸討ち入り
亡魂地震
野口 武彦[ノグチ タケヒコ]
著・文・その他
内容説明
将軍綱吉の治世は享楽と不安が背中あわせだった。内匠頭、上野介、内蔵助そして浪士たち…。彼らを突き動かしていた歴史の精霊の姿にレンズをあてる!
目次
第1章 元禄の春
第2章 新人類の武士道
第3章 殿中松の廊下
第4章 赤穂浅野家の危機
第5章 主家滅亡
第6章 総員、江戸に潜入せよ
第7章 吉良邸討ち入り
第8章 「元禄」の終焉
第9章 亡魂地震
著者等紹介
野口武彦[ノグチタケヒコ]
1937年東京生まれ。文芸評論家。早稲田大学第一文学部卒業。東京大学大学院博士課程中退。神戸大学文学部教授を退官後、著述に専念する。日本文学・日本思想史専攻。1973年、『谷崎潤一郎論』(中央公論社)で亀井勝一郎賞、1980年、『江戸の歴史家―歴史という名の毒』(ちくま学芸文庫)でサントリー学芸賞受賞。1986年、『「源氏物語」を江戸から読む』(講談社学術文庫)で芸術選奨文部大臣賞、1992年、『江戸の兵学思想』(中公文庫)で和辻哲郎文化賞、2003年に『幕末気分』(講談社文庫)で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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