出版社内容情報
74歳にして初めて小説を執筆した新人が描いた、初老の男とコオロギの2ヶ月の日々。団地住まいの独り者の胸に去来する人生。
74歳にして初めて小説を執筆した新人が描いた、初老の男とコオロギの2ヶ月の日々。団地住まいの独り者の胸に去来する人生。
内容説明
60歳を過ぎた彼は、塾の講師を勤めながら郊外の団地で一人暮らしをしている。残暑厳しい9月、彼が住む団地5階のトイレの窓から、一匹のコオロギが入ってきた。コオロギと向き合った2ヵ月の日々は、経てきた人生の、かけがえのない日常を想起させた。そこはかとないユーモアと悲哀を感じさせる筆致で描いたデビュー作。第55回群像新人文学賞優秀作。
著者等紹介
藤崎和男[フジサキカズオ]
1938年福岡県八幡市(現北九州市)生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社勤務。退社後は予備校の非常勤講師などの仕事を経て、現在はフリーの編集・校正者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムック
13
70代でデビューという衝撃と表紙に惹かれて読了。塾の非常勤講師をしている「彼」と、彼の便所に住み着いたコオロギの「カレ」の物語。描写が冗長かな~と思う部分はあったものの、彼の生い立ちなども間に挟まれており、中々面白かった。独り暮らしの年配の方独特の侘しさが感じられて、読んでて切なくなる所を「カレ」がいい感じにカバーしてくれてたと思う。2012/08/24
ちゃかぱん
3
この本を人に薦めて、「良かった」と思う人とは友達になれそう。 それにしてもご年配の方って思いのほか、思考は年寄りくさくないんだなぁと。今後年配の方に対する見方が変わりそう。もちろん嫌な意味ではありません。ちょうどお盆の時期に読んだのがよかったように思う。2012/08/14
メトメ
2
トイレに迷い込んだコオロギとのささやかな交流を通して、半生を振り返るお話。 ところどころに、自身の禿頭を自虐する描写があって、思わず吹き出した。 ハゲにロマンスはない 名言だと思う。2020/05/06
ピッピ
2
ひとりの寂しい男性と一匹のこおろぎ。こんなに一匹のこおろぎで心慰められるなんて♪暖まる気持ちになれる一冊。2015/05/12
mick
1
読む前に表紙を見て、どんなものだろ、と思ったが、読んでよかった。そこはかとなく漂う悲哀。大真面目だからこそのおかしみ。声を出して笑う程の場面が何度もあった。小説なのに。そんな中で蓮田善明と野球の話だけ異次元に飛ばされるようだ。著者の思いの反映なのか。さいごはしんみりした。2015/05/29