出版社内容情報
早稲田文学新人賞作家、怒濤の450枚 「公爵を破壊せよ」。エレクトラの命令はオレステスを震撼させた。気鋭の想像力が架空都市を燃焼させる。圧倒的筆力で描くノンストップ純文学
内容説明
荒れ地の図書館でエレクトラと再会したオレステスは、城の中心部へ、塔の頂へと近づいていく。僕は永久に少年のまま年を重ねてゆくはずだった―。新鋭が圧倒的なスケールで描く、鮮烈な四五〇枚。
著者等紹介
間宮緑[マミヤミドリ]
1985年生まれ。2008年、「牢獄詩人」にて第22回早稲田文学新人賞を受賞。以降、「群像」「新潮」「ユリイカ」等に作品を発表している。『塔の中の女』が初めての単行本(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
46
読む時期が早かったならば、琴線に引っ掛かるだろう幻想的でどこか鉱物めいた退廃性が漂う物語。オレステア。繊細で気高い心を持つ永遠の少年。だからこそ、誰よりも残酷で鈍感で愚かな少年。彼に女の身では叶えられない野心を託すエレクトラとの一方的にいがまれる共依存関係は、どこか『恐るべき子ども達』のポールとエリザベスみたい。そして大人になった私としては、数学に準えた会話ばかりするオレステアに対し、「下らない事を言わずに掘れ」と叱り飛ばす墓掘り人に共感を覚えてしまいます。2017/06/29
マツユキ
14
ガラクタでできた公爵の領地に住む少年が主人公。出会いはあるけれど、何者にもなれない少年。そして、相手には、あっという間に去られる。ある目的ができますが…。理解しがたいんだけど、どこか身近に感じるファンタジーでした。食べ物のせい?終盤が、本当によく分からないんですが、好き。可愛い。2019/09/04
多聞
14
硬質な文体、幻想文学と神話など複数の要素が融合した独自の世界観は、まさに見事の一言に尽きる。山尾悠子作品を彷彿とさせ、作者の今後の活躍が楽しみになった。2012/05/30
いやしの本棚
13
いろいろな神話や物語、≪おはなし≫の断片で作り上げられた一冊の本。エレクトラやオレステスという名は出ても古典悲劇のストーリーにならうでもなく、伏線がわかりやすく回収されることもなく、エピソードが収斂することもなく。紙片は放り出されたまま、開かれたまま。そこが好きだった。好みの世界。「扉のない部屋」っていうのは、「塔」に閉じ込められたラプンツェルの断片も入ってるってことだけど、むしろ扉がなくて閉じられているってことじゃなく、扉がないから開かれているってことじゃないのか…などとぐるぐる考えるのが楽しい。2016/08/23
秋良
11
ガラクタでできた公爵が統治する地に住むオレステス、ピュラデス、エレクトラ。エウリピデスの悲劇をモチーフにしてるのかと思いきや、どうも違うようだった。公爵がアガメムノンというわけでもない。人が見た夢の話を聞いてるような脈絡のなさはかなり読む人を選びそう。私は好きでも嫌いでもない……というか感想を抱きづらく、ギリシャ古典の翻案ということでミロラド・パヴィチの「風の裏側」を思い出した。ただギリシャ悲劇を下敷きにするならもっと結末まで徹底してドロドロさせてほしかった。残酷さが足りない。2024/05/15
-
- 和書
- 親子でする坐禅と呼吸法