出版社内容情報
現代思想の中心的理論家が探求したもの。 70年代アルチュセールへの注目から始まった今村仁司の思想的展開。近代・労働・暴力・イデオロギー批判から覚醒倫理へ、人間と社会の根源を見極めた哲学の軌跡
内容説明
一九七〇年代、アルチュセール読解、ボードリヤール紹介で衝撃的に登場し、八〇年代以降、盛り上がる現代思想の中心的理論家として注目を集め続けた今村仁司。しかしその問題意識の核心は、当初から一貫して「労働」「暴力」という、社会関係のなかで最も基礎的で重要な現象の解明であった。それを基にして社会の生成論、近代の解析、ユートピア論、ついには覚醒倫理の追究などへと拡がってゆく精力的な仕事ぶり。人間存在の原基的あり方、社会形成の根本動学解明への飽くなき探究は死の直前までつづいた。スピノザ、ルソー、ホッブズからヘーゲル、マルクス、アルチュセール、さらにアドルノ、レヴィナス、ベンヤミンに至るまで思想史を隈なく渉猟し、人間と社会に関する自らの一大体系を打ち立てた不世出の思想家の比類無き社会哲学を紹介。
目次
序章 「トランスモダン」への疾走
第1章 「近代性」を問う
第2章 近代的労働の体制―近代的奴隷制を超えるために
第3章 暴力と排除―第三項排除効果
第4章 イデオロギー批判の系譜―マルクスからベンヤミンへ
終章 「目覚め」の倫理に向かって
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nbhd
13
「親鸞と学的精神」があんまりに素晴らしくて感激したので、しばらくは著者の今村さんに師事していこうと思い立って手にとった本。個人的な話をたどると、①学生時代に現代思想を読み漁っていた時期にお世話になり(現代思想を読む事典)、②タイに留学していた時期にフィールドワークと社会哲学の融合的学識に大いに刺激され(タイで考える)、③携帯組立工場で夜勤をしていた時期に労働の本質を教えられ(近代の労働観)、④こたびの親鸞ブームでも一つのゴールに到達したと実感した本の著者がすべて今村さんだ。今こそ今村さんにZIの時期かと。2016/08/03
ハチアカデミー
1
B 広範囲の思想的知識を咀嚼し、紹介した今村氏の学術的変遷を知ることができる一冊。氏が現代という時代について考え、新たな思想を生み出さんとしていたことがわかる。マルクス、ベンヤミンによる、歴史の根元を問うことのできないものは神学であるというテーゼを受けとめ、そこから現代社会を見つめる。その上で、「労働」「暴力」といった問題をどう乗り越えるのかを考え続けた点は、もっと評価されて欲しい。数多くの文章・著作を残しているため、主要な著書を知りたくて手に取ったが、むしろ読むべき本が増えたことは贅沢な嘆きであろう。2012/02/19