内容説明
インド、ゴアに過ごすフランシスコ・ザビエル。彼の最後の願いは、中国への布教を行うことだった。しかし、その前には幾多の試練が立ちはだかる―。中国大陸を目前に、サンチェン島で没したザビエルを、アントニオ、フェレイラ、そして日本に残してきた弟子・アンジロウとともに描いていく。聖ザビエル、その人の姿がもっともよくあらわれているといわれる晩年に焦点をあて、死者が生者と対話をする「夢幻能」の手法で書かれた新しい小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たかぴ
3
私自身がキリスト教徒でも無いし、経歴からザビエルさんにも思い入れが深く出来ないので、これを正義とする面を見せられても共感しずらかった。あまりにご都合主義に解釈され過ぎてるような。人としてのザビエルさんを知りたかったのに。2023/02/17
はぴた(半分お休み中)
3
心打たれた。弟子は何人か登場するが、誰よりも見事な弟子はザビエルに心から忠実でどんなことがあっても従い、その死を看取った中国人のアントニオ。頭も悪く身分も低い、周りからも軽く扱われていた彼が、ザビエル最後の布教に役に立てる喜びが感じられる。ザビエルが死後聖人として崇められ自分から遠い存在になってしまったことに寂しさを覚えるところにも共感。ザビエルは信仰のためには周りとの衝突も辞さない激しい人間くささを持つ人物として描かれている。日本人の弟子アンジロウの霊との対話→2013/12/04
ででちゃん
1
遠藤周作の沈黙つながりと、宗教者の現実対応に関心があり、読みました。 作品としての構成、ストーリィの展開は少々意外でしたが、内容 面白かったです。2011/06/24
chris the bookwalker
0
日本布教後のザビエルと、中国人の弟子アントニオ。前者は独善的かつ狂信的、後者は不可解なまでに献身的。亡霊になって現れた日本人弟子と、ザビエルを裏切った宣教師、享楽的なインド人召使に共感してしまった。2015/01/20
wasabi
0
ザビエルが日本に続いて中国布教をめざしながらも、弟子たちの相次ぐ裏切りなどの阻害要因から体力、気力が衰えて死を迎える最も哀れな短い期間を著している。ザビエルが随分と褪せて見えるおかしな小説である。結局、著者がカトリックでありながら感じている何か煮え切らない苛立ちを、ザビエルの弟子の口を借りて述べているのだろう。2007/07/20