聖耳

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  • サイズ B6判/ページ数 265p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784062103800
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

現し世に耳を澄ませば平穏の内にひろがる静かな狂躁。生死の、夢現の、時間の境を越えて立ちあらわれる世界の実相。現代文学の達成をしるす最新連作小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

内島菫

29
ツイッターに書き込んだ私の文章のひとつに、ある方から古井由吉に似ているとの言葉をいただいたので、初めてこの作家を読んでみる。そのたとえが私の身に余る褒め言葉だったどころではなく、古井の文章の気魄にどこか畏れすら感じられ、本書を読むきっかけを与えてくださった人に二重に感謝を覚える。古井の一文一文の切り込み方は、彼の特徴を持ちながらもそれぞれに予測できない角度で突く。その隙のない突きは、対峙し矛盾するものをも一息に刺し、彼方と此方、主体と客体を一つながりにする。2017/10/26

踊る猫

25
言うまでもなく、あらゆる小説は記憶をベースに書かれる。どれだけブッキッシュな作家であろうと、「いまここ」で書き記すのは彼が読み進めた小説であり、感じた感情であり生きた記録である。古井由吉は「耳」を頼りに様々な人々の言葉を聞き分け、あるいは目で見たものを記録する。書くことは生き直すことであり、なにかを問い直すことである、と言っているかのようにも感じられる。この作家は憎しみを動機として書いている、と聞いたことがある。確かにニコニコと起きたことを鵜呑みにしていく作家には書けない疑いがありかつ怒りがざわめいている2021/07/17

踊る猫

20
狂乱があり、慟哭がある。描写されている記憶の中の風景(それは例えば空襲の記憶であったり、寄席の思い出であったりするだろう)は騒々しく、読んでいると具体的な音も聴こえてきそうだ。だが、この作家はそれをあたかもおどろおどろしく騒ぎ立てて描写することはなく、恐るべき統率において描き切る。ので、全ては崇高ささえ感じさせる静けさや硬質な感触を感じさせる。そんな中において女人が現れる場面が妙に華やいでいて艶めかしいのは流石にこの作家の筆と納得するやら感服するやら。悪く言えばワン・パターンではあるが、病みつきになる空気2021/01/30

sabosashi

1
眼疾にもとづく病室やら緩やかな恢復などをめぐって緩慢に筆が動く。とても静謐でむしろ厭世的でもあるがかといって声を荒げることはない(この著者にはあらゆる激情が無縁)。読み進めると見事に読み手の内面へと沁み込んで、われらすべての生きとし生けるものについて想いを新たにさせられる。結果として著者は恢復したわけだがそのときの切羽詰まったやるせなさを、これほどまで穏やかなトーンで綴りつづけるのは、やはりその底には精神の強靭さなるものがあるのか、あるいはいかなる強靭さなど振り向きもしない自己の世界を築きえているのだろう2013/07/24

メルセ・ひすい

1
現し世に耳を澄ませば、平穏の内に広がる静かな狂躁。生死・夢現・時間の境を越えて現れる世界の実相。現在が無数の細い枝で成り立っていて、その枝が自分の知らぬ過去を意識の中に引いてくる…。現代の不安を抉る。2009/02/01

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