内容説明
切支丹への厳しい弾圧が始まった慶長年間、人々は神を待っていた。海を歩き、卵のなかから経文を取り出したという奇跡を起こした神の子・天草四郎の出現に、切支丹は熱狂し、崇め奉った。彼のもとに結集し、キリストこそ真実の神と幕府軍に抵抗する農民たち。だが、ただ一人、絵師・山田右衛門作だけが、四郎の存在に疑念を持っていた…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
GaGa
3
祭り上げられてしまった天草四郎の苦悩。それに尽きる。しかし、本作の主人公は彼にあらず。この主人公の行く末こそが作者が描きたかったことなのかもしれない。2010/05/14
Isotoma
0
島原の乱についてのお話の世界と史実の乖離、伝承の天草四郎と現実の益田四郎時貞の乖離については、後世歴史学者の研究の成果を一部取り入れつつも、当時行われた切支丹側の悪事には殆ど触れず、基本的には、やはり天草四郎個人や切支丹大衆信者を徹底に美化するのは、映画会社の脚本家が持つ臭覚に従った打算による、史実には興味が無い大衆への迎合か。 と思いきや、この話独特の新仮説のために、そういった大衆の嗜好への大胆な裏切りをしている。結局、新しい仮説を言い出す歴史ロマンの世界の魅力が、打算に勝るのか。 2012/07/14
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