内容説明
焼け野原に響きわたる、歎きの声と歓びの歌。土地を離れ、悲しみを超え、女たちは語りだす。空を駆ける馬、サファイアの目の子ども、そして石や木の語る物語。この時代を語りつぐ世界文学の誕生。
感想・レビュー
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amanon
4
太平洋戦争開始前から、戦争突入、戦時中、敗戦、戦後という怒号の時代に翻弄される有森家の人々達。彼らの強さ、もろさ、はかなさは、戦後六十数年を経た今となっても、我々の心を強く打つものがある。特に婚約を交わした直後にその相手は出征、八年間も宙づりにされた状態で実質上有森家を支え続けた桜子の姿はひたすらに切ない。しかも、やっとの思いで婚約相手達彦との再会、結婚を果たすも結核に冒され、やがて短い生涯を終える。しかし、どこか悲壮感が希薄で、むしろ桜子が生前に放ったエネルギーのほうが印象深い。そこがすごいと思う。2010/10/13