内容説明
明治9年に来日、日本医学の基礎を築き、皇室の侍医を務め、温泉の効用を広めたドイツ人医師ベルツ。その妻となり、明治・大正・昭和を日本とドイツで生きた女性“花”。二人の出会い、愛、そして“国際結婚”とは?孫たち・ゆかりの人たちに聞く、感動の生涯。
目次
1 ベルツの孫娘ゲルヒルトとのめぐり会い
2 シュトットガルトへ
3 謎の少女
4 荒井はつとベルツの結婚
5 ベルツの時代
6 トクとウタの誕生
7 ドイツに渡った花
8 花の晩年
9 息子トク・ベルツと花の孫たちのこと
10 終わらなくなってしまった「花・ベルツへの旅」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばう
46
★★草津温泉のベルツ記念館で興味を持って読んだ本。草津温泉を世界に紹介したベルツと結婚した花は勝気で賢く優しく、しっかり者で異国の地で暮らし始めてからも気丈に生き抜いた女性です。日本という未開の地から来たという事で奇異な目で見られても困っている人がいれば惜しみなく援助する面倒見の良さ。明治時代、正式な国際結婚をした女性としてはクーデンホーフ光子が有名だけれど花さんももっと知ってほしい。本当に魅力的で素敵な人だから。そして殆ど手がかりが無い状態で、ここまで花さんについて調べ上げた作者の熱意に頭が下がります。2016/05/21
Midori Nozawa
11
本書は明治時代にお雇い外国人として来日してなんと20数年日本に滞在したベルツ博士、特に妻花のことを調べたものです。ベルツ氏と花との出会い。子どもトクのこと。トク(男)は10歳からドイツの実家で育てられた。トクには4人の男児と1人の庶子(女児)があった。女児トーマさんから語られる祖母花の思い出や父トクのことが特に興味深かった。伊香保、草津温泉にはベルツ氏の碑があり、天皇の侍医もされた。日独が第一次大戦では敵となった。トクはナチスの宣伝に武士道も利用した。国際結婚、ドイツという国の歴史が本書で理解が深まった。2020/07/28
けいちか
6
何冊か著者の作品を読んでいるが、いずれも明治時代頃に国際結婚をした日本人女性に関するノンフィクションである。自身も国際結婚をしていることから、何か探し求めているものがあるのだろうが、果たして著者が欲しい回答は見つかるのだろうか。この作品に関しては、著者自身の家庭の問題点から目を背けるために打ち込んだ作品とも思えた。2015/01/04
noémi
3
明治政府のお抱え外人医師、エルヴィン・ベルツの妻である花の一生を辿るノンフィクション。筆者は自分の国際結婚に疑問を感じることがあったらしく、先達にその答えを求めていた。筆者が扱った青山光子や勝田コウが同じドイツ語圏でも多民族国家であるハプスブルグ領で生活したせいかほとんど差別を受けなかったのと違って、花はその点では苦労した。特に花の息子が異文化の狭間でアイデンティティが引き裂かれて、分裂症に陥っていたのが痛ましい。しかし、こういったノンフィクションは小説と違い、帰着点というものがなくて却って迫力がある。2011/04/03
さんだる
2
著者の執念のようなものを感じた。時代は違うが、同じくドイツ人と結婚した花に自分を重ね合わせて、自分探しまではいかなくとも、何かを探し、見つけたい旅だったのだろう。2012/06/04