内容説明
芥川賞作家の小川洋子による初めての本格的な書下ろし長篇小説の誕生。有機物であることの人間の哀しみを澄明なまなざしで見つめ、現代の完璧な消滅・気化への希みを、美しく危険なシチュエイションの展開の中で描く注目の傑作長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
クリママ
48
一つづつ物が消滅していく島。いつ、どこのことなのだろう。鉄道があり、バスがあり、お店があり、図書館がある。そして、和室もあり、あるときの日本のことなのだろうかと思う。それとも、年老いていくことの比喩なのだろうか。物が消滅するのと同時に、そのものの記憶も失われる。記憶を持ち続ける人を秘密警察の記憶狩りが攫っていく。すべての物が消滅したとき… 小川洋子の静謐で不思議な世界の物語。2018/01/28
はな
36
綺麗な言葉に文章に流されて読み終えた感じ。おじいさんとドンが良かった。2020/06/25
あんこ
29
単行本で再読。小川さんがアンネの日記が書かれた時代から着想を得た物語。消滅が重くのしかかります。失われても心の痛みも体の痛みも感じないというのが悲しい。全てを忘れずにいることも時としてつらいけど、全てを忘れてしまうこともかなしい。消滅が行われる島も閉ざされ、「わたし」の小説の中でも灯の中に閉ざされていく。すべてを記憶しているR氏は地下室から出て、島から失われたものの重さに耐えられずにいられるのだろうか、と思わずにはいられません。単行本は装丁がとても好みです。2014/09/13
ロッキーのパパ
26
小川洋子作品は好きだけど、ストーリーは伴奏で現れてくる文章を楽しむことが多い。しかし、この作品はストーリーに引き込まれてしまった。少しずつ物が消え、それに関する記憶がなくなる世界。その世界をそのまま受け入れる「わたし」とそんな世界で記憶をなくさないR氏、R氏に支えられても運命を変えられず、「わたし」の周りから物がどんどん消え去っていく有様は、いつもの透明感だけではなく空虚感がたなびく余韻が残った。物語と文章の美しさを堪能できる佳作だと思う。2012/01/18
夏
24
時が経つにつれて一つずつ何かが消えてしまう島で暮らすわたしの物語。何かが消滅したら、島の人々の記憶からも消えてしまい、消えたものは永遠に島から失われてしまう。わたしの母のように、記憶を留めておけて何も消失することのない人々もいるが、彼らの存在が見つかると秘密警察に捕らえられてしまう。他の作家が書いたら重くシリアスな雰囲気になりそうなテーマだが、小川洋子さんはそうはならず、終始静謐な空気を保っている。ラストはこうなるしかないとわかっていても、驚きと切なさで胸がいっぱいになった。★★★★★2020/10/26
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- 和書
- 源氏の明り




