内容説明
外交官である父に伴われて、メキシコ、スペイン、ブラジルと大正期のほとんどを海外に過ごし、ベル・エポックの香気に触れた“雅び”の詩人・堀口大學。アポリネール、コクトーら二十世紀“新精神”詩人たちの息吹きを満載した訳詩集『月下の一群』は、洗練された機智と豊潤なエロスを薫風にのせて、わが国の湿潤な文学風土に送り込んだ。詩の子、恋の子、旅する子の面目躍如たる第一随想集。
目次
自画像(日記;唇を噛む ほか)
南米と西班牙(ブラジルの女;南米記 ほか)
季節の構図(初の秋風;冬の田園 ほか)
女人群像(ディトリッヒ;ノオマ・タルマッジ私見 ほか)
著者等紹介
堀口大學[ホリグチダイガク]
1892・1・8~1981・3・15。詩人・翻訳家。東京生まれ。慶應義塾大学中退。1909年、17歳の時、新詩社に入門、歌人として出発。翌年、同門の佐藤春夫を知り、生涯の親交を結ぶ。与謝野鉄幹・晶子を慕い、永井荷風を師と仰いだ。青年時代の14年間を海外で過ごす。19年処女詩集『月光とピエロ』を出版。25年訳詩集『月下の一群』の出版は、日本近代詩に新風を吹き込んだ。生涯に刊行された著訳書は300点を超えた。ラディゲ、ジュネなど小説の翻訳も多く、昭和の詩と文学に多大な影響を与えた。79年文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
15
著者については、詩人で翻訳家だったな程度の知識しか持ち合わせていなかった。読み始めるとその感性のしなやかさにたちまち引き込まれた。秋の空気の描写が特に素晴らしく、海外生活の中においても、この方は誰よりも日本人だったのだなと思わせられる。詩集も今度読んでみたくなった。2012/10/09
うた
9
梢を行き来しながらさえずる小鳥のように軽やかな大學の文体が気に入ってしまった。季節の話題一つでも、詩心を織り交ぜる豊かに語り、読者を楽しませてくれる。あとこの小さな随筆集に2度も長めに書くほど、小鳥道楽にハマった人だったのね笑。冬のイカルの鳴き声は確かに聞き入ってしまう。『月下の一群』も美しいものだが、他にもこういう随筆を出していないものだろうか。大學は読み返されるに値すると思う。2023/03/05
月
7
★★★★☆(堀口大學、詩人・歌人・フランス文学者・翻訳家。河盛好蔵の「作家の友情」の中の佐藤春夫と大學の関係が印象深かった為、大學の随筆集を手に取る。今年は丁度、岩波文庫から訳詩集「月下の一群」が再版されている。萩原朔太郎は当時「季節と詩心」を読んで「正直に告白すると、堀口君の或る抒情詩(ヴェニュス生誕など)より、かうした散文の方にずつと藝術的なエロチシズムと、ずつと本質的な詩文学を感受した。(「詩人は散文を書け」より)」と語っている。文体を四季で表現するならば春か初夏のような不思議な暖かさを感じる。) 2013/08/17
とろこ
4
言葉の選び方が、その美しさが、芸術としか思えない。 もっとこの人の言葉にふれたい。 2012/12/11
NагΑ Насy
2
「キュビズムの女神」という随筆で大學がローランサンの絵にほれ込むを読みて、いつか自分のローランサンの絵をはじめて見たときの心の揺れ動きが甦る。2009/01/06