内容説明
食うや食わずの苦学生、堀内と沢田。様々なアルバイトの末に、意にそわぬ選挙活動を手伝うことに…。敗戦後の闇市を舞台に、混沌たる世相とそこで生きぬく若い世代を、濃密な文体で描破した「なまけもの」、企業の空しい宣伝合戦の顛末記「巨人と玩具」等、小説三篇に、東京の街のスケッチ、ヴェトナム戦争をめぐるエッセイを併録。リアリズムの新たな可能性を拓いた“行動する作家”の初期作品を精選。
著者等紹介
開高健[カイコウタケシ]
1930・12・30~1989・12・9。大阪生まれ。大阪市立大学卒業。父の死により様々なアルバイトで一家の生活を支え、1954年、寿屋(現サントリー)宣伝部に入り、名コピーを送り出すとともに「洋酒天国」等を編集。57年、「裸の王様」で芥川賞受賞。64年、海外特派員としてヴェトナム戦争の最前線に立つ。その後、アマゾンやアラスカ等大自然に分け入るルポルタージュを数多く残す
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感想・レビュー
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あかつや
5
小説3編とエッセイを収録。小説は「なまけもの」が良かった。なまけものである主人公沢田の、カストリをあおりながらトウガラシまみれの生のモツをかっ喰らう描写がもう、とにかく迫力あって臭そう。生命力の塊である。他の小説もまあ面白かったけど、それよりも印象に残ったのはエッセイの方で、東京のいろんな裏通りをスケッチしたような「ずばり東京」やベトナム戦争について書かれたもの、どれも何気なさの中に研ぎ澄まされた鋭い言葉がまぎれている。若い頃はあんまり開高の本好きじゃなかったんだけど、なんか思ったより面白かったなあ。2019/05/02
あかふく
1
滅形の諸相。「裸の王様」よりは文体が粘ついているようにも。「二重壁」はベトナム戦争以後の「見ること」と、「なまけもの」は『夏の闇』と比較しうるかもしれない。この頃は動物的なものを書こうとしているようだ。2013/05/08
うゑしま
0
図書館で何気なく手に取った本。文章でもって、作者の思い通りの「感覚」を、読み手にこれだけ確実に感じさせるというのは、素直にすごいと思う。ただ、その「感覚」が「不快感」であることがちょっと、ね。いや、作者の思う壺だとは思うんですが。2014/05/28
Akieat
0
初めての開高作品です。こんなにまで美しい文章に触れられたことが、幸せむふふ。汚物などの文章表現に、文字から目を背けたくなった経験は初めて。それでいて小説全体に漂う清潔感がさわやかなのだから、溜息がでます。改めて著者のたくさんの本に触れてみようと思います。2013/12/29
ゆう子
0
この本図書館で借りて読んだのだが、読んでる途中で、これ前に読んだかも… と気がつく。たぶん何度か同じことやってる。買えってことかしら。2012/08/23