講談社文芸文庫<br> 寵児

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講談社文芸文庫
寵児

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  • サイズ 文庫判/ページ数 288p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061976986
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

ピアノ教室の講師をする女は、離婚して娘と暮している。娘は受験を口実に伯母の家に下宿して母親から離れようとしている。体調の変化から、ある日女は妊娠を確信する。戸惑う女が男たちとの過去を振返り自立を決意した時、妊娠は想像だと診断され、深い衝撃を受ける。自立する女の孤独な日常と危うい精神の深淵を“想像妊娠”を背景に鮮やかに描く傑作長篇小説。女流文学賞受賞。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

yumiha

29
「寵児」の意味は、「特別に可愛がられる子ども」と辞書は言う。誰が寵児なのか?娘の夏野子?10歳で亡くなった兄?想像妊娠した子?と考えたが、どうも思い当たらない。もうひとつの意味の「時流に乗ってもてはやされる人」では、もっともっと思い当たらない。高子は、内的世界が豊かに広がっているし、かなり冷静に自分とその周りを見つめているけれど、どこか投げやりなアンニュイな雰囲気が漂っていて、好きにはなれなかった。2019/06/10

松本直哉

22
女性として生きるのは、互いに両立しない方程式を解こうとするようなものなのだろうか。好きな男、離婚した男、つい関係を持ってしまった男とのもつれた糸、そこに娘や親戚の存在が加われば、こちらを立てればあちらが倒れる。こういう時に子どもが最優先というのが世間の意見だろうが、娘の卒業式にも行かず、しかし娘を連れて恋人との逢瀬に向かう女主人公の強引と自分本位をどうして責められよう。見知らぬ子どもを相手に宇宙人ごっこを始めるラストシーンなどむしろ清々しいほどだ。想像力で現実を変えられなくても想像力の真実性は揺るぎない。2025/01/23

tomo*tin

22
いつもは作者の性別ってあまり気にしないのに本書は「ああ、女が書いたな」と強く思った。文章はとても美しいが描かれる物語は生々しく、正常と一定の距離を保つ臭気を放っている。愛と執着と独占欲と孤独。何かがずれてしまっているがために制御できずに暴走する自我。開いた穴を埋めるための他者。実に生々しい。けれど多分、リアルとはちょっと違う。これはきっと読者を選ぶのだろう。共感することでしか介入を許さない物語だと感じた。女は心と身体が強く繋がっていて、その繋がり方は様々だ。接続がおかしいと全てが歪み揺らぐのかもしれない。2009/07/01

ぞしま

18
痛ましい、だがそれは終わりを予感させない。鋭くはない鈍い痛み…宿命的な地続きな苦しみが物語を覆う。私が昔しばしば感じていた陰鬱な景色が、否応なく、日本や日本語や日本人を感じさせる。私は高子にどこか自身と似たものを感じて、他の登場人物の様に彼女を決めつけることかできないまま頁を繰った。最後のシーンは象徴的だった。拒否…そうだ、そうやって生きていくしかないんだ、うまく立ち回らなくても良いんだ、そうだ…と慰めに近いシンパシーを感じる自分がいた。2016/02/21

あかつや

6
今で言うシングルマザーの高子はいまいち母親になりきれず、自分の身の回りの世話さえ手を抜きがちで、12歳の娘は愛想を尽かすとまではいかないが、受験を口実に叔母の家に身を寄せて戻ってこない。さみしがる高子だったがその時妊娠の兆候が、って話なのだけど、まあ高子はいい大人だからどんな目にあったっていいと思うのよ。でも娘がさ、12歳にしてはすごくしっかりしてて、それがなんとも痛ましい。子ども時代をこんな早く切り上げて大人にならなければならなかったなんて不憫な子だ。こっちも「寵児」にしてやれよなあ。面白かったけども。2019/03/15

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