内容説明
有島武郎の北海道ニセコ「狩太共生農団」跡。宮沢賢治の始めた岩手県花巻郊外「羅須地人協会」跡。武者小路実篤の埼玉県毛呂山と九州日向の「新しき村」。“ユートピア”の未だ消えぬ核心は何か?三人の理想家の燃焼と苦闘の跡地を北から南へと辿る。現地の人々を訪ね、資料、作品と対話し、その実践の意味を現代に問う。三つの精神の営為に深く共鳴する著者の魂。平林たい子賞。
目次
有島武郎「カインの末裔」の土地―狩太共生農団紀行
宮沢賢治「雨ニモマケズ」の背景―羅須地人協会紀行
武者小路実篤「この道を歩く」の道程―新しき村紀行
感想・レビュー
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AR読書記録
2
「新しき村」については少々読んでた。有島の農地解放については『橋のない川』で触れられて少し興味を持ってた。しかし宮沢賢治の農業指導については全然知らなくて、しかも知ったことで彼やその作品への印象がごろりと変わりそうだ。文学者自身のことはその作品に関わる範囲で知っておけばよいかという気もあるのだけれど、行動もまた作品のようにその思想・理想を明示しているなら、それらを複合的に読み解かねばもったいないことだなと思う。他、ユートピア思想(の夢、挫折)、小作制度、(近現代の)農民の歴史等、考えるテーマがいっぱいだ。2014/12/29