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内容説明
義経必死の腰越状も、兄頼朝の勘気を解く手だてにはならなかった。義経斬るべしの声は、鎌倉方の決意となってゆく。そして堀川夜討ちは、両者決裂の烽火であった。頼朝は大軍を率いて黄瀬川に布陣。運命の皮肉と言おうか、あのとき手を取り合った弟を討つための夜営になろうとは!この日から義経は失墜の道を歩む。波荒し大物の浦、白魔に狂う吉野山。悲劇は義経一人にとどまらない…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちゃいろ子
43
追い詰められる義経。 ただただ彼を愛する静が悲しい。 前巻の感想で頼朝の悪口を書いたが、源頼朝という人は義経を人身御供として、真実追い落としたかったのは後白河法皇であったのだろうと。なるほど。 清盛とも散々対立しつつも、それでも清盛の鷹揚さゆえ何とかお互い上手く渡り合ってきたし 義仲や義経などは、この老獪な人には太刀打ちできるはずもなく。 対して頼朝は、ずっと対立してきた清盛を懐かしく思うほどに(^_^;) 麻鳥が出てくる場面はいつでも癒される。でも蓬からしたら腹もたつだろうなぁ。 いよいよ最終巻! 2022/01/16
Kiyoshi Utsugi
42
鎌倉に入ることを許されなかった源義経は京都に戻り、更に船で西に落ち延びて行ったところ、嵐に出くわします。このため、一度摂津に押し戻され、そこから奈良の吉野に向かい、吉水院で静御前等とともに数日を過ごします。 ただ、そこも安住の地にはならず、静御前と別れて、潜伏することになります。 一方、捕らえられた静御前は鎌倉に送られ、源頼朝、政子夫妻の前で踊らされます。更に、義経の子を産みますが、男の子であったため、赤子は由比ヶ浜に沈められるという悲運が襲います。 涙の物語でした。2022/08/12
金吾
36
判官贔屓はありますが、それをもってしても政治性が欠けている義経が頼朝に抗しきれないのはよく伝わります。才能が軍事に集中したイメージなのでやはり天才なのだろうと感じます。静の部分は長いですが、シリーズ全体の流れから鑑みるとありかなと思いました。2023/04/17
シュラフ
35
一ノ谷、屋島、壇ノ浦、その天才的な軍事能力で平家軍を壊滅させた義経。その天賦の才を活かせば、鎌倉の頼朝をも一泡ふかせることができたであろうが、その後は鎌倉方の追跡をかわすだけの逃避行。なぜか義経は、腑抜けてにしまったようである。「人の住むところに、闘いのない地上などあるものか」と金売り吉次に嘲笑される。一方、打倒平家と鎌倉勝利の陰の功労者たる後白河法皇は、建礼門院を見舞う大原御幸で虚脱感にさいなまれる。気づいてみれば平家が鎌倉に代わっただけ。それどころか平家以上の専横。「なんのために、平家を追ったか」。2017/05/06
Toska
28
義経の没落と逃避行を合戦シーン以上にじっくりと描いた巻。本作の義経はちょっと「いい子」に作りすぎた感あり。純真一途、どうしても兄を疑うことができず、頼朝討伐の院宣を要求しながら一戦に及ばず都落ちするなどちぐはぐな行動(「また儂が汚れ役か…」という行家のボヤキが聞こえてきそうだ)。ここまで積み上げた人物像のため自縄自縛に陥った形だが、彼だって牛若時代は大人を振り回すわがままパワーを発揮していたのにねえ。最後くらい吉川英治の手のひらから飛び出し、成吉思汗にでも何でもなっちゃいなよ!と言ってやりたくなる。2025/01/18