内容説明
“戯作者”の精神を激しく新たに生き直し、俗世の贋の価値観に痛烈な風穴をあける坂口安吾の世界。「堕落論」と通底する「白痴」「青鬼の褌を洗う女」等を収録。奔放不羈な精神と鋭い透視に析出された“肉体”の共存―可能性を探る時代の補助線―感性の贅肉をとる力業。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんらんしゃ🎡
51
[青鬼の褌を洗う女] 性においても自由奔放なその女は、男の間をあっちへふらふらこっちへふらふら。揺れる身体には免震オイルダンパーを付けて少し落ち着いたらどうだ。もっともデータ改ざん装置では効果のほどは分からないが。しかしそんな彼女はKYBだ。気の向くまま、揺れてるようでその本質は、母性。2018/10/18
ja^2
11
「青鬼の褌…」のみ。老境の孤独に耐えきれずサチ子という禁断の実を口にした久須美は地獄の苦しみを味わうことになる。それはある意味当然だ。▼サチ子とは空間を共有できても、時間を共有することはできない。寂寥感はかえって増すばかりだが、だからといって手放すこともできまい。彼はまさしく地獄を徘徊する青鬼である。▼だが、その褌を洗う女もまた鬼なのだ。生活力の乏しかったであろうこの時代の女性は誰もが「野垂れ死」への不安を抱えていたのではないか。多かれ少なかれオメカケ症であっても不思議ではない。彼女もまた孤独だったのだ。2018/11/25
れどれ
10
恍惚。現実の現実性を煮詰めて煮詰めて煮詰めきったエキスを割り下に、適切妥当な言葉の数々で調味を施して、虚構の物語に仕立て上げ、こちらを現実から別天地へかどわかしてくれる。読み終えた後には恐怖の凍えや官能の火照りが心身に残される。そうとも、あちきが小説に求めているのはこれだよと、夢心地の恍惚に浸りきった。2019/08/26
ふな
10
「青鬼」のみ読了。婦人団体が見たら激怒しそうな表現も有り。だがそこが良い。話自体は戦後を舞台にした「オメカケさん」の独白なのだがどこか幻想的。追記:「いづこへ」「青空と外套」「私は海を抱きしめていたい」を読了。坂口氏の女性観がよくわかった。2014/02/06
ユ-スケ
6
読み応えアリ 文学のおもしろさを強く感じる 太宰に似ているようでまったく似ておらず、安吾のほうに“親近感”をもった にしても安吾、谷崎、太宰、永井荷風・・・とこの頃の作家はスゴイな・・・2015/05/23