内容説明
屋根裏部屋に隠されて暮す兄妹、腹を上にして池の底に横たわる150匹のメダカ―脈絡なく繋げられた不気味な挿話から、作家中田と女たちとの危うい日常生活が鮮明に浮かび上る。性の様々な構図と官能の世界を描いて、性の本質を徹底的に解剖し、深層の孤独を抽出した吉行文学の真骨頂。「暗い部屋」の扉の向こうに在るものは…谷崎賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nonpono
83
大好きな吉行さんの小説。吉行さんの生き様が大好き。高校生のとき、古典の先生が自分の卒業論文だと教えてくれた。古典の先生の顔と声が好きだった。先生から学んだのは「源氏物語」冒頭の桐壷の巻。今でもそらで覚えているくらいに。先生の乾いた感じが吉行さんの感じに似ていたし、くりくりしたかわいい目をした先生だった。噂では先生は後輩の先生と駆け落ちしたらしい。やはり、先生にも熱い焔があったようだ。さて、本書。わたしはこの暗室のなかで囲われ、主人公を待つ女に昔から憧れた。ただ、待ち、抱き合うだけの女になってみたかった。2026/02/12
HANA
74
著者の性を題材にした小説は暗い密室に閉じ込められたような陰鬱さと隠花植物を眺めるような淫靡さが好きなのであるが、本書は著者自身をモデルにしているせいか、長編であるせいか、あっけらかんとしたイメージ。本編はそういうせいで読みつつ少々戸惑ったのだが、挿話的なエピソード、150匹のメダカとか屋根裏で暮らす兄弟とかは面白く読めた。特に後者のエピソードは傑作中の傑作「出口」に通底するものがあるな。著者のこういう暗闇の中で蠢く体内回帰願望的な作品本当に好き。性を日常のものとしてその間を浮遊する本編との対比がいいな。2021/11/11
GaGa
49
うまれつき病弱なため、子をつくることは望まず恐れすらしている「わたし」と子の産めぬ体となった女「夏枝」。人が生まれるために行う性行為=生と性が欠落した性行為のぶつかりあいが、もがき苦しむかのようで、物悲しくも息苦しい。官能小説でありながらハードボイルドな雰囲気が漂う傑作。読む前は、どうせカメラマンが暗室で悪さをする話だろうぐらいに思っていたが、まるで違った。反省。2012/03/16
ゆか
33
前情報を何にも知らない状態での読了。背表紙のあらすじのせいか、もっとゾクッとする恋愛小説かと思いきや、哲学的な言い回しではあるものの、この時代にして結構エロい小説。ちょっと朝の電車で読むのが気が引けるほど…。小説である主人公は、色んな女性と関係をし、時にはその相手達にもヤキモチを焼き、相手が深みにはまりそうになるとうっとおしがり、子供なんて絶対に欲しくない。主人公はどこにでもいる男性でした(笑笑)って、文章にすると酷い男性だなぁ〜2018/10/26
佐島楓
25
繰り返される、性、生、そして死のモチーフ。やはり吉行さんは、女性の不思議というものを考え抜いた作家ではなかったか。女性としての悦び、母性の謎、男性としての自身の乾いた性。男と女とは、これほどまでに考えていることが違うのかと驚かされた。2012/12/12




