内容説明
文化は一級ながら軍事は二級の大国魯の書生曹カイは、隣国斉との戦気が激しくなる中、若き英王同に見出され、軍略の才を存分に発揮する。智謀の賢相管仲が牛耳る斉との、和戦両様の闘いが大詰めをむかえた柯の盟約の場で、曹カイがとった驚くべき策。君臣のあり方と政治の、理想を描く、中国歴史小説集。
感想・レビュー
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遥かなる想い
85
魯の曹カイ,帝舜,周王朝建国の功労者召公,秦の宰相百里奚を描いた短編集。ある程度、中国古代史に関して、知識がないと 読み解くのは難しいと思う。個々の話は面白いのだが、残念なことに背景の時代へのマッピングができない。 2010/06/12
ふじさん
47
侠骨とは、「我が身を惜しまず、人の難儀を救い、生死の境を渡っても、才能を自慢せず、施した恩を誇るの恥とする者」の気骨・人格をいう。まさにこれを体現した4人を主人公にしたのがこの作品だ。それぞれの人物は個性豊かで中国の歴史を動かした人物としては、生き方に気負いがなく飄々とした仁の人たちだ。短編で内容が凝縮していて読みやすく人物にも親しみを覚えた。 2020/05/30
春風
17
各短編はそれぞれ、曹劌、舜帝、召公奭、百里奚を主人公に据える。各々が抱く理想の政治を胸に陰に陽に運動し、それが本人達の意思を超えて実を結んでいく。出色は、百里奚を描いた『買われた宰相』。百里奚は100歳を超える長寿を全うした人だそうだが、歳を経る毎に人間に深さが増していき、短編とは思えぬ重厚感がある。作品は全て古代中国のものだが、解説にあるように、表意文字としての甲骨文や金文から、宮城谷氏に想像されたものが作品に反映されているようである。2016/02/16
高橋 橘苑
15
宮城谷昌光氏の作品を初めて手に取ってみた。筆者はあとがきで、甲骨文字や金文からの連想で、古代の人々が動き出す不思議さを目撃したと言っているが、そういえば、情景描写的なスタイルで書かれている。解説を読まずとも、筆者の理想とする仁人が奈辺にあるか理解できるが、個人的には胸を打つ様なひっかかりは感じ無かった。ただこれは、短編でもあるし、その様な手法を敢えてしているのかもしれない。4編の中では、表題作の「侠骨記」がもっとも印象に残った。筆者の目撃した情景が鮮明だったんだろうか。2014/04/25
Tomoichi
12
中国の歴史ものの小説って面白いって思わせる表題作を含む短編集。ハッピーエンドなお話ばかりなので安心して読めます。2015/05/19