出版社内容情報
アレゴリーの宇宙的スケールを絢爛と語り、「思考の仲介者」として再評価。近代のシンボル優位に対してアレゴリーの復権を謳った名著思考の仲介者=アレゴリーの復権
18世紀の文芸理論から20世紀前半のニュー・クリティシズムに至るまで、アレゴリーは「抽象的観念を絵画的言語に移し替えたもの」でしかない、深みのない表現形式として、低い評価を与えられてきた。1964年刊行の本書は、こうしたアレゴリー蔑視、シンボル優位の風潮に異議をとなえ、表象論の新しい展開とも呼応しながら、アレゴリー復権の契機となった画期的名著である。
ギリシャ・ローマの古典、聖書釈義から、『神曲』、『妖精の女王』、シェイクスピア、ホーソン、カフカ、さらには『一九八四年』、『蠅の王』、SFに至るまで、脈々と受け継がれたアレゴリー文学の系譜を自在に参照し、その多様なかたちを示したフレッチャーは、アレゴリーを「思考の仲介者」として評価し、その宇宙的スケールを絢爛と語っていく。テクストに体系的に註釈を加えていくモードであるアレゴリーは、宗教的、哲学的、文化的な諸信念の混淆へと向かう。アレゴリーは「放逐せず、結集させる。同時に多様な起源、多彩な知的スタイルの感覚を保持する」。多様性が様々な場面で問題となっている現在、著者がアレゴリーのモードに読み取った「思考の仲介者」の機能はさらに重要性を増している。
アンガス・フレッチャー[フレッチャー]
1930年、ニューヨーク生まれ。英文学・比較文学者。ニューヨーク市立大学特別名誉教授。著書に『アレゴリー』(64)、『思考の図像学』(71。法政大学出版局)、『アメリカ詩のための新理論』(2004)、『シェイクスピア時代における時間・空間・運動』(2007)など。
伊藤 誓[イトウ チカイ]
1951年生まれ。英文学者。東京教育大学大学院修士課程修了。首都大学東京教授。主な著書に『〈ノヴェル〉の考古学』(法政大学出版局)、訳書にアンガス・フレッチャー『思考の図像学』(法政大学出版局)、デイヴィッド・ロッジ『バフチン以後』(法政大学出版局)など。
内容説明
“思考の仲介者”アレゴリーの宇宙誌。古典古代から受け継がれたアレゴリーの魔術的な力、豊饒な世界を論じて、その宇宙的スケールを絢爛と語り、現代におけるアレゴリー復権を謳った画期的名著。
目次
序論
第1章 ダイモン的仲介者
第2章 宇宙的イメージ
第3章 シンボル的行為―前進と闘い
第4章 アレゴリー的因果律―魔術と儀式の形式
第5章 テーマ的効果―両価性、崇高、そしてピクチャレスク
第6章 精神分析学的類比―強迫観念と強迫衝動
第7章 価値と意図―アレゴリーの限界
図版集
著者等紹介
フレッチャー,アンガス[フレッチャー,アンガス] [Fletcher,Angus]
1930年、ニューヨーク生まれ。イェール大学で学士号と修士号、ハーヴァード大学で博士号を取得した。62年から68年までコロンビア大学准教授、74年までニューヨーク州立大学教授、99年までニューヨーク市立大学教授、同年同大学名誉教授。三十四歳のデビュー作『アレゴリー』(1964)などの著書がある。中世英文学、ルネサンスの詩と演劇、仮面劇、欧米の小説、アメリカ現代詩を縦横無尽に論じる博覧強記にして、精神分析学、社会学、文化人類学、科学史の該博な知識を駆使するポリマス
伊藤誓[イトウチカイ]
1951年生まれ。東京教育大学大学院文学研究科英文学専攻修士課程修了。首都大学東京名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
袖崎いたる
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