内容説明
馬を愛し、ともに生きたいと願った女性、藤村くみ。大正時代、東北岩手に生まれ、騎手を志すようになったくみを、社会の冷徹な壁は何度もはねつけた。馬とともに日本各地を転々とし、男として生きながら、夢を紡ぎ続けた一女性。その二十九年の生涯、心もようを渾身の力で描いた長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
towerofthesun
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日本初(一説には世界初)の女性騎手免許を取得しながら一度も騎乗機会を得られず1942年に29歳で亡くなった、斉藤すみ(澄子)。主人公や周辺人物の名前は変えられているが、筆者の丹念な取材に基づいた小説としてこの件が物語られる。厩舎はおろか社会全般にはびこる女性への偏見、「女性初」であることの苦労、それをはねのけるための人知れぬ努力。状況は現代も改善の道半ばで、女性初の競馬記者として数々の偏見に晒された筆者の思いが文章に込められている。それだけに、主人公くみが不遇の中で最後に見つけた幸せがわずかな救いだ。2024/12/17
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- 和書
- 六本木クラス 〈2〉