出版社内容情報
【内容紹介】
現代の東京から花のお江戸へと転時(タイムスリップ)した男が見た150年前の姿とは?そこには、見るもの聞くものすべて、現代人の常識を覆す、実に魅力的な暮らしがあったのだ。彼は、持参した文明の利器や医学知識で大活躍、世にも不思議な能力を持つ“神仙”として、女たちにも大もての大尽暮らしとあいなったが……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タツ フカガワ
53
元製薬会社の研究員の速見洋介が恋人の流子といるとき突然150年前の江戸へタイムスリップする。ジャケットにセーター姿で現金7~8万円と4色ボールペン、腕時計にマッチを所持したままで。やがて洋介は東京と江戸を心のままに行き来できるようになるが……。江戸風俗研究家でもある著者だけに江戸の情景がとてもリアル。また子(ね)の刻など十二支を使った時刻表現は江戸初期までとか、座布団は明治以降で江戸ではまず使われなかったなど、時代考証の興味深い情報もそこかしこに散りばめられているのも楽しい。小説としても面白い一冊でした。2022/10/18
Sato19601027
47
再読。東京に恋人がいる40代の速水洋介が、1970年代の東京から150年前の江戸へタイムスリップして、若い辰巳芸者と恋をする物語だ。後に江戸文化研究者となった石川先生が、会社勤めをしながら「現代人の目を通して、江戸時代の世界をそのまま表現したい」と取り組んだ意欲作であり、情緒溢れる江戸の町が東京との比較解説付きで生き生きと描かれている。「すべてにわたって折り目正しく、不便ながらのんびりした江戸」「非常に便利だがトゲトゲしい東京」と表現され、25年前の私は、すっかり江戸贔屓になっていた実に面白い物語だ。2023/11/10
kokada_jnet
47
タイムトラベルにより、過去の世界を忠実かつ詳細に再現・体験するという仕組みは、同じくSFファンダム出身の先輩作家である故・広瀬正の影響を強く感じる。また、男性優位な作風も、広瀬正に似ているところ。2021/07/11
BlueBerry
39
所謂、タイムとラベル物ですね。その点には新鮮さは無かったですが江戸時代に付いては結構丁寧に調べられていてそちらは勉強になりました。2013/10/06
kameyomi
23
場所は東京の日本橋、美しい恋人の目の前から江戸時代にタイムスリップする男の物語。突然現代人の姿のまま江戸に現れたにもかかわらず、仙人ということになり、腕時計を売った金や薬の知識で金持ちになり、可愛らしい愛人まで囲う。その様な男として理想的なのかも知れない設定の主人公に、東京と江戸を比べさせ、文化論を語らせている。大雑把に言えば、素晴らしい江戸文化を捨て西欧化に邁進した薩長への批判という事になるのだろが、それをどうこう考えるというより、設定の都合の良さに笑える構成になっている。2025/01/05