内容説明
仏・ランス大聖堂から男性が転落死した。地上81.5mにある塔は、出入りができない密室状態で、警察は自殺と断定。だが半年後、また死体が!二人の共通点は死の直前に、シャガールの花窗玻璃を見ていたこと…。ランスに遊学していた芸術フリークの瞬一郎と、伯父の海埜刑事が、壮麗な建物と歴史に秘められた謎に迫る。
著者等紹介
深水黎一郎[フカミレイイチロウ]
1963年、山形県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院後期博士課程単位取得退学(仏文学専攻)。在学中に仏政府給費留学生としてフランスに留学。2007年に『ウルチモ・トルッコ犯人はあなただ!』で第36回メフィスト賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobby
106
芸術探偵シリーズ第三弾。『花窗玻璃』と書いて『はなまどはり』、要はステンドグラスのこと。この様に、作中作としての語りには、カタカナをいっさい使わず全て漢字で表す趣向に隠された仕掛けにはニヤリ。事件はランス大聖堂での二つの転落死の謎解きと決して派手ではない。相変わらずの蘊蓄は健在で、個人的には明治文豪を思わせるルビ付き漢字表現の味わいも加わり楽しめた。そのトリックは辿り着ける訳ないほど強引だが、しっかりばら撒かれた伏線に思わず納得。そしてラストでの反転からの衝撃!副題“シャガールの黙示”の意味する所は深い。2018/04/25
ダイ@2019.11.2~一時休止
70
芸術探偵その3。作中作のカタカナ表記がないのが戸惑うが当て字が面白いのもある。2014/03/24
koma-inu
45
芸術探偵第3弾。今回は探偵がフランスで遭遇した2つの事件を、作中作で解き明かす。なんとカタカナを全て漢字(仏蘭西とか)で表現しており、芸術へのこだわりをフルに感じ取れます。ランス大聖堂、絵画手法に特化した物理トリックで、アンフェアにならないようにしっかり伏線を張ってるのがお見事。作中作の間に、「読者への挑戦は無駄」とも取れるメタ発言もあり、ミステリへの毒を含んだ提言が、作者らしいなーと思いました。2022/08/16
燃えつきた棒
25
作者は、僕のお気に入りの作家だ。 この人の作品は、芸術作品に関する長大な蘊蓄をその特徴としており、僕が気に入っている点もひとえにその点にあるのだが、今回だけは少々閉口した。 今回の蘊蓄はランスの大聖堂とそのステンドグラスに関するものなのだが、問題はその描き方だ。 2017/03/26
しろ
15
☆8 最近になってノベルスを読むことが増えてきたけど、意欲作が多くて楽しいな。この作品も、大半を占める作中作にカタカナ表示を一切使わないという興味深い形式をとっている。そしてそれが気に入った。無理矢理当て字をつけて、そこにカタカナのルビをつけていて、回りくどいと思われるかもしれないが、それがいい。読みやすさは意外とあるし、なによりページ全体の字面がいい。昔から日本文学は漢字や言葉の工夫で滋味を出してきた。そういった古き良き文学を感じさせてくれた。ミステリはおまけだが、話が魅力的だったから他も読んでみたい。2011/01/07
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