内容説明
幕末・明治期、英国の外交官・日本研究者として活躍し、日本の古書収集家として傑出した人物であったアーネスト・サトウ。そのサトウが収集したコレクションの中に浮世絵の研究、特に謎の浮世絵師「写楽」の考証にとって重要な資料である『増補浮世絵類考』が含まれていた。作者の斎藤月岑の死後、サトウの所蔵をへて、ケンブリッジ大学図書館にたどり着くまでの期間、この本はどのような変遷をたどったのか。写本として受け継がれた『浮世絵類考』の全般にかかわる問題にも言及しつつ、その謎を追う。
目次
はしがき―本題の“まくら”として、まず剣客と写本の話
序章
第1章 『浮世絵類考』
第2章 『増補浮世絵類考』を入手した事情をさぐる
第3章 アーネスト・サトウの蔵書収集
第4章 サトウの蔵書の行方と蔵書目録
第5章 アンダーソンとサトウ
終章
著者等紹介
小山騰[コヤマノボル]
1948年愛知県生まれ。成城大学文芸学部卒業。慶應大学大学院修士課程(日本史)修了。ロンドン大学UCLでPG Dip(図書館・情報学)を取得。国会図書館勤務などを経て、1985年から2015年までケンブリッジ大学図書館日本部長。主な編著書に、『ケンブリッジ大学図書館と近代日本研究の歩み』(勉誠出版、2017年、第20回図書館サポートフォーラム賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紫
4
ケンブリッジ大学図書館に勤続三十年の著者による、明治の英国人外交官アーネスト・サトウの和漢書+美術品コレクションの検証本。主題はあくまでA・サトウによる和漢書の収集と処分の全容でして、元職場の蔵書で最も話題性の高い『増補浮世絵類考』に注目してみました、といった構成であります。ほんの百年と少し前の、それも著名な外交官の事跡でも、記録が残っていない事柄は分からないものだと思い知らされるばかり。記録の断片から推論を進める研究者の努力には頭が下がりますが、同じような文章が頻出するのはいかがなものか。星4つ。2023/04/12
志村真幸
3
斎藤月岑の『増補浮世絵類考』は、写楽の正体に迫る資料として知られる。写本の状態でアーネスト・サトウの蔵書になり、その後、ケンブリッジ大学図書館に収蔵されて現在に至る。 その来歴を詳細にたどろうとした試みが本書。 ウィリアム・アンダーソンやF・V・ディキンズ、さらにサトウの図書係を務めた日本人などもふくめ、資料を捜索し、推論を重ねて、『増補浮世絵類考』の動きが明らかにされていく。 ただ、かなり専門的な研究であり、よほど関心のある読者でないと厳しいのではないか。2025/06/03
ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
0
『函館水上警察』からの流れで手に取った。アーネスト・サトウが収集した膨大な和書が、その後どのような行方をとったか。明治期の英国人の人脈と、明治日本の読書家たち。剣術と歌舞伎と外交官と武家故実の親和性なんて、考えたこともなかったよ。一般向けに書かれた論文といった体で難しかったけれど、面白かった。2020/12/28
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