内容説明
日本人にとって花とはいったい何であろうか―。豊かな実りへの願望をこめて開花を待ち、四季折々に花を愛で、その移ろいに「あはれ」を感じ、いけ花という芸術を生んだ日本人。その心の原点を、万葉集、古今和歌集など古典の世界に渉猟し、各地の祭りや正月、雛祭り、端午の節供、重陽の節供など年中行事の民俗に探訪する、花をめぐる生活文化史。
目次
序説(花の古典―花と日本人の生活)
花と生活史(花と祭り;正月の花;桃の節供;花見の伝統;菖蒲の節供;七夕花合の源流;八月十五夜;菊の節供)
花と古典(万葉の花;武蔵野の花―ウケラとムラサキと;紫のゆかりの物語;花伝書覚書)
結びにかえて(心の御柱)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
クナコ
10
初読。桜の時期なので。古来よりの「花」の語源を「ものの先」「兆し」の意の「はな」と同一として捉え、生花に限らず造花、成句、伝統儀式などでの役割なども踏まえた「花」について語る。原書出版1974年とのことなのでとても文章が難しく、現代風俗についても乖離が大きかったが、とても深い内容だった。四季の花々を愛でるのが日本人の心ーーなどどよく言われるものの、それはなぜか、なぜその種の植物で象徴されるのか、記紀などにある伝説や和歌集、古典文学作品などの記述から深く深く読み解いており、著者の教養の広さにも圧倒される。2025/04/03
双海(ふたみ)
9
日本人にとって花とはいったい何であろうか?この疑問に答えるべく著者(桜井満國學院大學教授)は『万葉集』『日本書紀』『古事記』『古今和歌集』『懐風藻』『源氏物語』などの古典の世界を旅する。私の興味関心では「さくら」に関する記述が豊富な「花と祭り」の章と、神宮(伊勢)に関する「心の御柱」の章が印象強い。2013/12/08
高槻
7
季節の花と折々の祭り、花と芸道、神話・伝説・古典に登場する花について 農耕民族であった日本人にとって、花は神意の発現と信じられて来た 桜の語源として、穀霊を表す古語のサと神座の意のクラの組み合わせという説がある 菖蒲、蓬と「食わず女房」については、これらの植物の強い香りによって避邪の霊威をもつと見られて来たために物語に登場したのではないかとされることを初めて知った 子どもの頃にこの昔話を読んで、女の正体が化物だとわかる場面よりも草むらに投げ込まれただけで体が溶けてしまった場面の方が余程怖かったので、これ2017/10/07
メーテル/草津仁秋斗
1
花に纏わる古代から現代までの深呼吸や民俗、古典に見る植物の捉えられ方、風姿花伝における花の意味など、様々な観点から日本人と花の関係について記した本。2015/06/07
秋良
0
花は枯れていく過程が醜いし虫が寄ってくるからあまり好きじゃなかったんだけど、昔の人は散りゆくさまにも「あはれ」を感じてたとか読んじゃうと、ううむ。もう少し花にも興味をもってみようか。いや、でも虫嫌いなんだって。2014/01/12