内容説明
中世ヨーロッパは教皇・皇帝という聖俗権力の下の階層秩序的な社会であった。人体諸器官に喩えれば君主は頭、元老院は心臓、胃と腸は財務官と代官、武装した手は戦士、足は農民と手工業者、そしてそれらは魂であるところの聖職者の支配に服する―ほかに建築・蜜蜂・チェスなどを隠喩として社会の構成と役割を説明する中世人の象徴的思考を分析。
目次
序章 隠喩による社会認識
第1章 蜜蜂と人間の社会
第2章 建造物としてのキリスト教社会
第3章 人体としての国家
第4章 チェス盤上の諸身分
終章 コスモスの崩壊
著者等紹介
甚野尚志[ジンノタカシ]
1958年、福島県生まれ。1983年、東京大学大学院人文科学研究科修了。京都大学人文科学研究所を経て、東京大学大学院総合文化研究科教授。ヨーロッパ中世史を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Haruka Fukuhara
8
知的にとても面白かった。学術文庫に入る前に結構前に発表した文章らしく、著者いわくこの記述には自分で結構不満らしい。何か手頃な本があれば著者の新しい本も読んでみたい。中世社会を鮮やかに描き出していて圧巻。蜜蜂の話とか人間としての国家とか、本当に面白かった。2017/05/25
α0350α
5
蜜蜂、人体、チェスについての文書から社会観を考察するというのが面白いですね。当時の人たちがどんな考えだったのか興味深く読めました。2022/02/08
アカ
2
インノケンティウス三世の手紙が、うまいなぁ、と思いました。隠喩が分かるとぐっと面白くなる文章。 世俗関係はチェスがおもしろかった。蜜蜂の隠喩は進化論に似た何かを感じました…。自然科学ってこわいなぁ。2009/12/22
可兒
2
教会組織がミツバチにたとえられたり、チェスのポーンに八種類の職を当ててみたり、比喩がかなり自由。近代に受け継がれえなかった思考回路というのは、カンブリア紀の怪物たちのようで興味深い2009/04/07
Go Extreme
1
蜜蜂と人間社会: 蜜蜂は交尾せず繁殖・キリスト教キリスト教神学「処女の生殖」 女王蜂が共同体の中心・死ぬと社会崩壊 ウェルギリウスー蜜蜂を人間社会の模範 セネカー王政の正当性 プリニウスー王蜂の誕生や生存競争観察 キリスト教社会の建造物: 教会は人体に基づいて設計・信徒共同体は「キリストの体」 支柱は使徒を象徴 フーゴーーノアの箱舟を教会と信徒共同体の理想像 国家と人体の比喩: プラトンー国家を人体に例え、支配者=理知、戦士=気概、商人=欲望と分類 中世カロリング期ー教権=魂、俗権=肉体 チェスと社会秩序2025/02/06