内容説明
生活のすみずみにまで美が溢れる日本の文化。斬新で質の高い装飾性、「用」の充足に卓越した工芸品。日本独自の美はどのようにして創出されていったのか。清冽なリリシズムと画面に気魄が漲る名作を残した等伯、豪快で絢爛、活力に満ちた壮大な絵を描いた永徳など近世日本を代表する造形家たちの業績と魅力を、意匠家という著者独自の視点から捉え直す注目の論文集。
目次
第1部(狩野永徳;長谷川等伯;千利休;古田織部;本阿彌光悦)
第2部(宗達という名の光悦;對青軒聞書抄;緒方深省覚書)
著者等紹介
水尾比呂志[ミズオヒロシ]
1930年、大阪府生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。武蔵野美術大学名誉教授。美術史家。専攻は日本絵画史・工芸史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
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狩野永徳の「洛中洛外図屏風」、長谷川等伯の「千利休像」、古田織部の陶器、本阿彌光悦の蒔絵硯箱など、書かれてある。千利休のところでは、わびの解説がある。「わびは麁相(そそう)である。麁は粗で、粗いこと、粗末で貧しいさま」(144ページ)。つまり、「自然の絶対相」(145ページ)ということだ。「わびの美は相対美」ではなく、「わびの美は完全不完全の対立を超えた絶対美、究竟の美」(146ページ)である。美のとらえ方は人さまざまだ。評者もその美の評価をできるほど人生を長く生きていないので、ゆくゆくは理解したい。2012/07/11