内容説明
一七八九年に勃発したフランス革命のさなか、数々の戦功を立てて、皇帝に登り詰めたナポレオン。果敢な行動力、卓越した戦術、天性の指導力、軍事的・政治的天才の歩んだ道はいかなるものだったか。揺れ動く英雄の心の内面に光を照射し、その生誕から臨終までの全生涯を克明に描写する。人間ナポレオンの実像に迫る注目の世界的名著。
目次
第1章 孤島―誕生からジョゼフィーヌとの結婚まで
第2章 奔流―イタリア遠征から霧月一八日のクーデタまで
第3章 大河―マレンゴの戦いからナポレオン二世誕生まで
著者等紹介
ルートヴィヒ,エミール[ルートヴィヒ,エミール][Ludwig,Emil]
1881年ドイツのブレスラウ生まれ。1910年以降ドイツ・スイスで活躍した小説家・伝記作家。スイスに帰化。ビスマルク、ゲーテ、ワーグナー、リンカーン等に取材した辛辣な心理描写による伝記的作品を著した。1948年没
北沢真木[キタザワマキ]
1966年、早稲田大学文学部卒業。1970年、スウェーデン、ニッケルヴィク美術学校卒業。1977年、パリ第四大学中退
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感想・レビュー
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Tai
17
著者は徹底的にナポレオンの内面の動機ー決断と躊躇、行動と煩悶、打算と夢ーをつぶさに観察し感情の連鎖の再構築を試みる。コルシカのブオナパルテが愚かな兄弟を次々に王にする様はマフィアのよう。母親は決して浮かれない。アレクサンドロスに憧れるがこの時代に合わない。人間に対する侮蔑と深い洞察力、異邦人特有の批判精神を持ち、理論と実践の絶妙なバランス、行動力、懐疑主義が彼を抜群の立法者にした。有能な者を登用し過去10年間停止していた巨大な国家機構が再稼働する。しかし綻びの種が随所に。英雄というより愛憎、欲望の塊だ。2021/07/29
BIN
5
ナポレオンの内面や人間関係をメインに描いた作品。軍事や政治面はあまりない。ジョゼフィーヌへの暑い想いが漲っており、裏切られているのがわかって絶対離婚だと喚きながらも、なかなか切れずにイライラ。なぜか理由がよくわからんが読んでいて非常に疲れたので、下巻は読まない。また気が向いたら一から読むかも。2018/03/07
オザマチ
5
救国の英雄かと思いきや皇帝となり、無茶な戦争をしかけ、最後は島流しとなった…教科書の断片的な情報だけでは不可解に見えるナポレオンという人物について、興味を持ったので読んだ。2014/01/29
uburoi
1
2004年に刊行された時に購入し一読するも下巻にまで至らなかったものを再読。オーストリアでナポレオン暗殺を(ナイフで)試みた18歳の青年コルヴィザール(まるで山口二矢)のことはよく覚えている。ナポレオンは彼を恩赦にしたかったのだ。コルシカ島出身の下級軍人が皇帝に昇り詰めるまで、つまりはジェットコースターの頂点に至るまでが上巻であった。2023/11/23
鮭
1
コルシカが生んだ、近代最後の英雄、ナポレオン。この本では彼の最たる面である、戦争や軍事、政治といった面ではなく、どちらかというと内面の葛藤を中心に描かれている。小説的な構成の為、すべてが真実であるという保障はないが、ナポレオンという人間の複雑さがよくわかる本である。後世に Art of war と称えられた戦の天才が、その生活までが戦場さながらであり、そこでは決して Art にはすることが出来なかったもどかしさが伝わってくる。下巻のセントヘレナ編からはその末路に涙を超えた虚しさがこみあげてくるのを禁じえな