内容説明
中国の律令に学び多大な影響をうけた法治体制下にあって日本独自の性格を示す、古代天皇の実相とは何か。畿内を本拠とするヤマト朝廷が、畿外豪族への支配を拡大するなかに見せる、天皇の氏族制的基盤とは。1980年代以降の古代政治学・政治制度史研究に大いなる指針を提示した著者が、律令国家における天皇の権威と支配力の実態に迫る。文庫オリジナル。
目次
第1章 古代天皇制と太政官政治
第2章 律令制の形成
第3章 天皇と太政官の権能
第4章 東アジア外交と日本律令制の推移
第5章 律令国家・王朝国家における天皇
第6章 天智の初め定めた「法」についての覚え書き
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
politics
3
80年代における古代政治史の到達点が判る論集。研究進展により本書の内容が更新されてしまっている部分もあるだろうが、著者の意気込みは今尚本書を読めば感じ取れる。天智系と天武系による「擬似革命」論、仲麻呂政権による太政官制変容の萌芽など、興味深い論点が散りばめられている。著者も言うように古代における天皇と政治の関係を分析することは、古代以降、近現代に至る天皇と政治の関係を観る点でも重要な示唆を与えてくれるだろう。2024/05/04
Mentyu
2
著者の一般向け講演録などを文庫版として編纂したもの。律令体制下における太政官と天皇の緊張関係や、7世紀の国際的緊張と律令国家形成など日本古代史のオーソドックスな論点がまとめられている。文庫化したためか、史料が全て読み下れていたり、ふりがなが多用されるなど読者に配慮した体裁になっている。筆者は名古屋大学退官後すぐに亡くなっているが、その時は9世紀から10世紀について扱おうとしていたらしい。早逝が惜しまれる。2019/01/08