内容説明
「マイスター・エックハルトというのは偉大な名である。…我々はエックハルトを知っている。同時に我々はエックハルトを知らない」と語られる中世ドイツの神秘主義思想の創始者エックハルト。本書は、思想家エックハルトの生涯と思想の形成を第一人者が精魂を込めて叙述。さらに「脱却して自由」「神との合一」等を説いた論述、及び説教集を平易に紹介、広範にわたる彼の思想の本質に迫る意欲作。
目次
1 エックハルトの生涯と思想の形成(はじめに;時代の様相と徴候;説教者修道会(ドミニコ会)と異端問題
パリ大学人文学部・神学部とアリストテレス哲学
ケルン神学大学とアルベルトゥスの弟子たち ほか)
2 エックハルトの論述と説教(論述;説教;説教集より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三柴ゆよし
15
エックハルトの中心にある「我を捨てれば、神がそこを満たす」という命題は、ヴェイユの思想、あるいはドストエフスキーの読解において山城むつみが提示した「ゼロに賭ける、そして誤つ」という捨て身性にもかかわり、要するに100に至るにせよ0に留まるにせよ、一度は0を経由するほかない。0から100へと一足跳びに架橋する、こうした信仰の飛躍に年々惹かれていく自分がどこかにいて、このあたりの思想の系譜はもうすこし丁寧に追っていく必要を感じる。すべてが理解できたわけでは無論ないが、今後も折に触れて読み返していきたい。2020/04/13
けろあっく
2
自己を空にせねば神に満たされることは決してない…2013/02/08
Bevel
2
エックハルトの境遇、生涯、時代背景を追いながら、内容を解説し、さらに発禁処分を受けた彼の文章が再発見されてからの受容史に関する記述もあり、研究入門によさそうだなって思う。文献案内もある。2010/05/09
v&b
1
前半300ページの評伝部分が手堅くよかった。後半200ページがエックハルトその人による著作なのだが、亀山郁夫のカラマーゾフ訳のように、平明すぎてあまりよくないように感じた。岩波あたりで読んだ時のが入ってきたような。完全に好みではありますが。(説教集、著述集などは)繰り返しあたれる分量なので、適宜読んでみよう。異端と正統の問題はそこまで深く掘り下げられていない。2015/07/24
iquot
0
岩波文庫の『エックハルト説教集』を持っているが、読んでもいまひとつピンとこなかった。本書は前半でエックハルトの生涯を追いつつ(とは言え生前のエックハルトについて知られていることはごく僅か)、思想の要点を年代順に著作などから概説する。そして後半に彼の論述、説教の翻訳が収められている。そのため、説教を読むときの「読み方」「ポイント」を掴みやすかったように思う(前半は難しくて意味の掴めないところもあったが)。岩波文庫の『エックハルト説教集』も改めて読んでみようと思った。2018/03/30