内容説明
英国生まれの世界的プラントハンターが、植物採集のため幕末の長崎、江戸、北京などを歴訪。団子坂や染井村の植木市など各地で珍しい園芸植物を手に入れるだけでなく、茶店や農家の庭先、宿泊先の寺院で庶民の暮らしぶりを自ら体験。日本の文化や社会を暖かな目で観察する一方、桜田門外の変、英国公使館襲撃事件や生麦事件など生々しい見聞をも記述。幕末日本の実情をつぶさに伝える貴重な探訪記。
目次
日本上陸―長崎遊覧
貿易港としての評価―横浜見物
江戸から二四マイル―神奈川の宿場風景
オールコック公使の招き―神奈川から江戸へ
大老の暗殺―大君の都
英国公使館の火事―江戸の近郊
染井村の壮観―植物さがし
隅田川界隈―浅草寺参詣
ワード氏の保護箱―江戸から神奈川へ
天然の美―瀬戸内海の風光〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
77
北区飛鳥山博物館で「王子は日本のリッチモンド」ってロバート・フォーチュン(役の人)が語る映像は印象的だったけど、まさか本を出してたなんて! その言葉も載ってるし! 本書は1860年に訪日したプラントハンターの見聞記。情景が浮かぶような生き生きとした語りで当時の日本を伝えてくれる。植物に限らず文化・風俗や幕末の大事件も透徹した視点で記されているのが素晴らしい。それでいて、愛らしい妓達に囲まれて芳しい茶をすすったり、気持ち悪いと思いながら食用猿を食べたり、何とも妙味があり好感が持てる人柄なのも素敵。オススメ!2022/07/07
Ryoichi Ito
10
著者は英国のプラントハンターRobert Fortune(1812-1880)。チャノキを中国からインドへ移植したことで有名。訳者は武田薬品工業の社長・会長をつとめた三宅馨。 幕末騒然とした日本へ1860年と1861年に来訪したときの貴重な記録だ。日本社会,文化の観察が極めて面白い。「日本は階級差の小さい文明国」だと。桜田門外の変,英国公使館襲撃事件,生麦事件などについても詳述。フォーチュンは多くの園芸植物を日本から英国にもたらしたが,アオキの雄木を英国に導入,赤い実を結ばせることに成功した。 2023/05/12
Ribes triste
10
「きっと好きだと思う」と勧められて、どストライクでした。イギリスの有名なプラントハンターの旅行記なんですが、博物誌的視点なのが実に面白いのです。日本の植物(樹木の種だの菊だの斑入りだの)を手に入れるのにウハウハだったり、気候、地質、昆虫、鳥類、農業など多岐にわたる観察記録がされてます。さらに在日中に英公使館襲撃事件が起こったりも。中国からチャノキをインドに持ち出したのはこの人だったのですね。(この本には出てきませんが)2016/03/14
どろすて
8
長崎の三学者(ケンペル、ツュンベリー、シーボルト)に続いて日本にやってきたプラントハンターかつ園芸家、フォーチュン氏の旅誌。中国から英領インドへチャノキを密輸するという一大事をやってのけた人が書いたはずなのだけれど、それを感じさせないような(主に日本の植物に対する)はしゃぎ方、無邪気さは微笑ましいほどである。日本人の暮らしぶりに関する考察は、氏の人柄によるものでもあるだろうと感じた。2019/05/24
hitsuji023
8
英国生まれの世界的プラントハンターが、植物採集のため幕末の長崎、江戸、北京などを歴訪した本。同様の本との違いは著者の職業柄植物の話が多いこと。また、英国公使館襲撃事件や生麦事件についてはその時日本にいた外国人としての生々しい記述にテレビでニュースでも見るような衝撃を受けた。 この中に出てくる愛宕山や向島からの風景も今では見ることが出来ないのが残念でもあるし、時間の流れも感じる。ちなみにこの本の著者が主人公のノンフィクション「紅茶スパイ―英国人プラントハンター中国をゆく」もオススメ。2015/11/22
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- 和書
- 国家・階級論の史的考察