内容説明
秦漢帝国の滅亡後、約三百八十年の分裂時代に終わりを告げた隋の統一。その後に続く唐は高句麗を滅ぼし、西はイスラム帝国と衝突するまで版図を拡大した。律令制が確立される一方、女帝専権で悪名高い則天武后は科挙によって人材を吸収し、李白や杜甫が活躍する文字盛行をもたらす。華やかな唐文化の開花、玄宗と楊貴妃の悲恋を生んだ安禄山の乱など波乱に満ちた隋唐三百年間の実像を精緻に論述。
目次
第1章 隋の南北統一
第2章 唐王朝の創業と貞観の治
第3章 則天武后―女帝の出現
第4章 玄宗の開元・天宝時代
第5章 律令制
第6章 大唐の文化
第7章 律令制支配の破綻―盛唐の終焉
第8章 両税法の成立
第9章 中央と藩鎮
第10章 世界帝国的性格の後退
第11章 黄巣の大乱
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolflat
13
18頁。唐朝を興した高祖李淵は、関隴集団(北周の鮮卑系支配集団)の出身で、隋朝の大官を歴任したのち、隋末の内乱期の末年に立ち上がり、特にその次子李世民(太宗)の補佐によって、唐朝を創業した。高祖の時代は群雄との合戦にあけくれたが、太宗の即位とともに天下は統一され、「貞観の治」と呼ばれる盛世を現出した。唐朝は隋の律令制に基づいてこれを発展させ、当時、世になお勢力を誇った漢人貴族と対決してこれを政権から遠ざけ、関隴集団による支配を確立した。それらを基礎に対外発展に乗り出し、突厥第一帝国を滅亡させた。2023/02/22
Hatann
7
隋の統一後から唐の滅亡までの300年間を素描する。隋唐は鮮卑系の関隴集団による支配から始まる。支配の必要性から律令制が導く。庶民を把握して土地を割当て(土地に縛り付け)物納税及び兵役を課す。但し、律令制は唐の中期に崩壊する。多くの庶民が逃亡して税収も兵士も不足する。金納税の導入により経済がデフレとなり、募兵制の導入により傭兵的性格の軍隊が種々の社会不安を巻き起こす。煬帝による大運河建設により中国北部と南部が物流を通じて結びつき、大運河を通じて南部の経済的成果が物資の不足する北部へと吸い上げられていった。2019/06/30
非実在の構想
2
税制兵制の解説は非常に煩雑であるが、北魏から隋唐まで概観するにはうってつけ。分担して書いているので前半と後半で趣が大きく異なる2015/10/23
dokugokan1
1
布目潮渢・栗原益男『隋唐帝国』は、南北朝末から唐末にかけての通史。講談社「中国の歴史」の旧シリーズ。 一般向けの概説書ではあるが、税制や藩鎮の仕組みなどの説明はかなり濃密で、レベル(読み応え)は高い。 中公「世界の歴史」シリーズの礪波護・武田幸男『隋唐帝国と古代朝鮮』を読んだ後で、本書を読むと、理解がはかどる。2020/12/01
じぇろポーta
1
その起源(北朝の鮮卑系支配集団を祖に持つ)ゆえに他の漢人王朝に比べて世界帝国的性格を強く帯びていた唐帝国。最盛期には北方・中央アジアから東南・極東アジア(朝鮮半島・日本列島)まで広く文化的・政治的な影響下に置き、異民族が交易のため渡来することで唐朝内の日常文化に様々な影響を与える。湖族系支配層は後の元朝清朝と異なり積極的に漢民族との同化を果たしその自意識においても完全に漢民族化するのであるが、それが世界帝国的な性格の後退が際立つ唐朝後期にあっては仏教その他の外来宗教の排撃、儒教復権へと繋がる。2020/08/21