内容説明
自らを「大島の百姓」と称し、生涯にわたり全国をくまなく歩きつづけた宮本常一。その歩みは同時に日本民俗学体系化への確かな歩みでもあった。著者の身体に強く深く刻みこまれた幼少年時代の生活体験や美しい故郷の風光と祖先の人たち、そして柳田国男や渋沢敬三など優れた師友の回想をまじえながら、その体験的実験的踏査を克明かつ感動的に綴る。宮本民俗学をはぐくんだ庶民文化探究の旅の記録。
目次
1 家の歴史
2 祖父
3 父
4 母
5 私にとってのふるさと
6 郵便局員時代
7 小学校教員時代
8 柳田、渋沢、沢田先生にあう
9 アチック・ミューゼアムに入る
10 民俗調査の旅
11 戦時中の食料対策
12 戦後の農漁村をあるく
13 山村と離島
14 学位をもらう
15 日本一長い食客
16 雑文稼業
17 若い人たち・未来
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shoji
48
民俗学者の宮本常一氏の自叙伝です。民俗学とは、口承伝承されている文化を掘り起こして人々の過去の生活を復元する歴史学の一つだと思っています。その手法は、口承され言い伝えられてきたことの「聞き取り」が全てだと思っています。それには足で稼ぐしかありません。宮本常一氏は一生をそれに費やしました。脱帽です。2019/04/18
井月 奎(いづき けい)
45
著者自らが語る半生記です。私は民俗学というと柳田國男、折口信夫、そして宮本常一しか思い浮かばない、まあいうなればミーハー民俗学ファンなのですが、そのミーちゃんハ―ちゃんな見方でとらえると宮本常一は常に「今」と「未来」のことを考えているように思えます。今を生きる人がどこからきて、なぜ今のような生活をしているのかを各地をフィールドワークして考えているように見えるのです。それは「今」がいつか過去になり「経験」「知恵」となって「未来」へとつなげる。その橋渡し役を彼はしているように思えます。とてもいい本でした。2021/11/23
アナクマ
39
日本を隅々まで訪ね歩き民衆の行いをつぶさに見聞きした人。晩年の回想記。ちょっともう、メモしきれないくらい覚えておきたい言葉が満載。旅の経緯や裏話がテーマなので宮本の感性や主張がストレートに記されているのが特徴か。◉「失われるものがすべて不要であり、時代おくれのものであったのだろうか」「生きるということは…一人一人にとってはその可能性の限界をためして見るような生き方をすることではないかと思う」「(年寄りも中年も若い人も)一番関心の深いのは自分自身とその周囲の生活のこと、村の生活のことである」2022/12/29
ワッピー
36
宮本常一の回想録。生い立ちから始まり、祖父・父親からの影響、郷里の生活、そして柳田国男・渋沢敬三・沢田四郎作との出会い、アチック・ミュージアムでの調査行、戦時中から戦後の苦労のなかで培われた人脈の力、ただ聞くだけではなく、自分の聞いたことを伝えて回る講演行を通じて情報を蒔いては収穫するなかで各方面から頼られるようになった流れは当然であると同時に、他者ではなしえない偉業でもあると感じました。山村や離島の振興策・佐渡の鬼太鼓復活、日本各地の民俗資料館設立、山口の古典籍復刻、猿回し芸の復活と影響範囲は広い。 ⇒2023/11/08
ジャズクラ本
22
○宮本常一の自叙伝で、日経新聞の「私の履歴書」の長い版と思えばよい。宮本は54歳まで渋沢敬三に師事し、書生或いは食客という立場にあり(無論嘱託的な仕事はしていた)、大学で教鞭をとり、執筆による生活の基盤を確立するのはそれ以降である。半ばニートみたいなものだが、若い頃からフィールドワークを彼のライフワークとしてこだわり抜き、且つ記録とアウトプットを怠らなかったことが彼の偉さだと思う。収入は大切だが、それ以上に自分の歩く道を見据えて着実愚直に歩き続けた人という印象が強く残った。/宮本常一「民俗学への道」2020/08/03
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