内容説明
日本=東洋文化とも西欧文明とも全く異質のパラダイムとして、世界史の中に屹立するイスラーム文化圏。近年その復権は著しく、来世紀に向け世界各地で影響力を増大させている。この勝れて宗教的なイスラーム世界の人々の思想と行動の源泉こそ『コーラン』。本書は『コーラン』の章句を深く読み解きながら、創造と終末、神による裁きと報いなど、イスラームの根本的な世界観と人生観を明らかにする。
目次
序論 課題と方法
第1章 創造の空間的構造―天地の創造と人間の創造
第2章 創造の時間的構造―創造と歴史
第3章 言葉による創造
第4章 無からの創造
第5章 終末の情景
第6章 「裁き」の構造
第7章 「報い」の構造
第8章 終末と時間
第9章 終末と信仰
第10章 創造と終末
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イプシロン
19
本著は『コーラン』を意味論的解釈で読むとどうなるかが検証されたもの。意味論的とは言語学的という意味である。ではアラビア語の知識がいるかといえばそうではないが、アラビア語の時制には「完了形」と「非完了形」しかないという文法を見据えて読むことが重要であろう。なぜなら、基本的に本著における「創造(過去)」は完了形にあたり、「終末(未来)」は非完了形にあたるからだ。そうしたことから、イスラム教は「創造」という過去から受けた神からの恩恵を知り、現在において神を信じ感謝し御心に背かずに生きるなら、「終末」という2024/07/23
amanon
3
あまりに素朴な感想だが、博士論文として書かれたものが、文庫として世に出るほどわかりやすく、なおかつ内容も濃いということに驚かされる。こういう例はかなり希ではないか?それはともかくとして、本書を読んで、改めてイスラム教とキリスト教との間にある類似性と絶対に相容れないものとの対比に驚かされる。特に後半は終末や創造など、まさにキリスト教にとって看過することのできない重要な概念が取り上げられているため、とりわけ興味深く読めた。できれば、キリスト教神学がイスラム教をどう捉えているかを知りたい。概ね良書と言える。2014/11/04