内容説明
ボストンの近郊、コンコードの町に近いウォールデン池のほとりに、ソローは自ら建てた小屋で、2年3カ月、独り思索と労働と自然観察の日々を過した。人間の生活における経済の理念をはじめ、人生のあるべき姿や精神生活の大切さ、森の動植物への情愛などを語りながら、彼は当時のアメリカ社会と人間を考察し続けた。物質文明の発展が問い直されている今日、ソローの思想の持つ意味はますます大きい。
目次
経済
住んだ場所とその目的
読書
音
孤独
訪問者
豆畑
村
池
ベーカー農場
より高き法則
動物の隣人たち
暖房
先住者―そして冬の来訪者
冬の動物
冬の池
春
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イプシロン
37
ソローは森の生活を通して「Nature」から何を得たのだろうか。その一点を読み取れるか否かで本著に対するイメージは二分することだろう。「Nature」の意味はふつう自然とされるが、英語ではもっと広い意味がある、自然力、本質、そして、人知が及ばない力(働き)といった意味がある。当然、ソローが森の生活で得たのは、「人知が及ばない力」という部分であり、彼はその自然力と微塵も変わらない力が自分のなかにも、あらゆる人の中にもあることに気づいたといえよう。それゆえに、たかが権力をもつというだけで、奴隷制を肯定したり、2022/09/20
マウリツィウス
29
ソローの言葉を読み、考えることがあります。生きていく上での「知恵と知識」は矛盾するものではない。「常識」を固定観念の代名詞としなかったソローの意図はギリシャの時代を懐古的に復元したものではないとも捉えます。つまりソローは快楽や余興の意味を「学びの時間」へと変えた。そしてソローは「現実」を極めて穏当に捉える。『聖書』あるいはホメロスを生活の指針へと変えたソローは現実と言葉の総和を矛盾無く説く。アメリカにおける「自由と思想」をはっきりと見据えた結果でしょうか。聖書とギリシャに育まれた「懐かしい土地の思い出」。2014/05/11
fseigojp
24
ビーパル世代のバイブル 師匠は、あのトランセンデンタリズムのエマーソンだとのこと これ幕末の話ですからねえ アメリカはすごい2016/05/10
長谷川透
24
森を捨て都市を築く。いつしか森から人の姿は消え、森は切り開かれて都市と化していく。文明批判の書として有名な書物であり、実際には全くその通りなのであるが、この本は孤独の書でもある。森の隠者として暮らしたソローは孤独の中でこの本を記す。孤独との向き合い方を書くが、彼にとって孤独は健全な状態である。孤独の中に生きる者のとる行動は2種類あると思う。1つは孤独の中に新たな己の王国を構築し、その支配者として君臨する。もう1つは孤独の中で自己を極限まで透明にし自己を孤独に同化させることだ。ソローは後者である。2014/01/11
ハチアカデミー
14
B 退屈である。自然の中に身を投じ、社会を客観的に見つめ直し、呪詛を吐く。己の生活を省み、それが如何に世俗や風習に惑わされたものであったかを考察する。そして、自然への予測できない驚きや、人間に介入するのではなく、かってに成長し、破壊する実在にふれる。本書の退屈さは、本書の価値を貶めるものではなく、端から楽しませるつもりはないが故のもの。現代社会が求める短絡的な結論も、けばけばしい娯楽性もない。ただただ森の中での思考を綴る。とはいえ、ソローの持つある種の俗っぽさ、小市民さも魅力。怒りっぽいし。2013/01/10