内容説明
一度愛し棄て去った土地をふたたび訪ね、無傷でいることはできない。なにかが失なわれていた。その不在こそが私の胸中の漠たる悲哀の源なのだ。―出雲をはじめ横浜、京都など日本各地を旅した八雲。そこで出会った様々な人々と風土に、八雲は来日当初とは異なる新たな印象を抱いた。激しい近代化の波の中で失なわれゆく明治日本の気骨と抒情を、深い愛惜の念で綴った感性あふれる名作品集。
目次
英語教師の日記から
日本海の浜辺で
伯耆から隠岐へ
化けものから幽霊へ
日本人の微笑
横浜にて
勇子
京都旅行記
出雲再訪
富士の山
橋の上
お大の場合
日本の病院で
ちんちん小袴
おばあさんの話
勝五郎の再生
蛍
露の一滴
力馬鹿
ひまわり
蓬莱
私の守護天使
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たつや
3
名著と聞いて読了。小泉八雲が日本で教師をしていた頃の日記を中心に京都等の旅行記等内容は多岐に渡り飽きずに興味深く読めた。文章も大変読みやすく古さを感じず読めた。些か日本人を褒めすぎの箇所もあるが、明治期の日本人がこの通りだったかも知れない。面白い読物でした。2022/10/17
Haruka Fukuhara
3
「英語教師の日記から」(平川祐弘訳)に描かれた日本の教育風景はとても爽やかで清々しい。その伝統は戦争後の教育改革の前に既に失われていたようにも見えるが、その辺りの話は何の本を見ればわかるのだろう。教育史とかいう学問もあるのかな。「日本人の微笑」(平川訳)も良かった。2017/03/11
saga
3
江戸時代の心・伝統を持った「明治」という時代・人々の記録。偶然に八雲が遺してくれた文章を読むと、現代の日本は悪い方向で西洋化が進んでしまった感が否めない。当時の八雲の目には「滅私」が美しいものに映ったのだろう。しかし、今は「個の時代」なんて言って利己主義的な日本人が増え、目を背けたくなるような犯罪を報道で見るにつけ、日本人が失ってしまったかつての心の大切さを思わずにはいられない。2012/05/21
大楠公
2
日本人の素晴らしさを再認識出来ました。外国人であるハーンの目を通して明治の日本人の姿が描かれてます。武士階級だけではなく、一般庶民の姿からも、現代の日本人が置き忘れてきたものを、我々日本人なら必ず気付ける筈です。忘れ物を探すために是非読んで欲しい一冊です。2022/03/01
嬉々
1
青い瞳でみつめた土着の匂いが色濃く残る明治の日本。黒い瞳では感じ取れない各地の風土を色濃く描いている。特に岡山?だったか田舎の警察官が、障子の穴から八雲が密やかに祭りの様子を覗き見ている様子を、もの凄い嗅覚で見つけ出し、睨みつける場面が私の心に刻み付けらて忘れられない。