出版社内容情報
【内容紹介】
マルクスは、所有理論に基づいて資本主義を批判し社会主義への展望を打ち出したが、それは「支配の社会学」を閑却していた。本書は、歴史は合理化の過程であるという観点から、社会主義のもつ歴史的宿命、すなわち、官僚制の強大化を指摘したウェーバーの講演の全訳・解説である。ウェーバーの洞察は、現代社会主義の抱える諸問題を鋭くつき、われわれを驚嘆せしめる。社会主義に対決するウェーバーの姿勢を知るうえの格好の書である。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobody
19
ウェーバー学の泰斗大塚久雄に「私はたった20年ウェーバーを学んだ」と言わしめた資本主義の精神の定立者ウェーバーの社会主義観とは。『終わりなき世界』に曰く社会主義は資本主義のアントではなくその要素を最も先鋭化させたものであり、資本主義の鬼っ子である。かほどの人が「マルクスの原典に親しんだ様子もなく」「社会主義についての体系だった研究はほとんどなく」「俗流社会主義の批判」を行っている。オーストリア将校団を対象とした講演でありドイツ革命での対応同様体制内への「市民層」引き止め役デマゴーグとしての面目躍如である。2017/06/26
bapaksejahtera
15
支配の諸類型と官僚制組織について、精緻な分類と評価を施した名著の付録として掲載された演説原稿を抜き出し出版された本書。ロシア革命後露の要請で単独講和を受け入れたドイツは共産党宣言をバイブルとする社会民主党を中心とする政治勢力により大きな混乱に見舞われた。ウェーバーは政治的動機から、単独講和に不信感を有する墺洪帝国将校団に、本書を内容とする講演を敢行する。企業による所有と経営の分離は、ホワイトカラーという市民=官僚の成立を促す。社会主義も同様、官僚制に依存せざるを得ず、独裁を招来する。百年前にかく予言した。2024/10/19
さきん
10
どのような体制を志向するにせよ、一定の規模を上回る国家なら、専門化、官僚社会化は免れえないことを説いている。本書で言う社会主義とは、より共産主義のことを指しているのではないかと思った。著者は革命のような混乱と荒廃を生むやり方ではなく、賢い市民層が民主主義による自治を行い、官僚の暴走を抑えることを望んでいた。また格差問題に関しては、革命を経ずにカルテルによる競争の規制、国家の財政金融政策による景気調整など打つ手がいろいろあるのではないかと著者は考えていたようだ。2015/08/20
ロラン
9
ウェーバーが社会主義について書いているのを意外に思う人は多いかもしれない。このことは訳者自身が予期しており、まえがきや解説でも触れられているが、ウェバーが社会主義に対する並々ならぬ関心を持っていたという事実は、本書を一読すればあっさり了解される。官僚制は、資本主義と社会主義との政治体制を問わない、近代における普遍的な統治機構とウェーバーが説いたことは有名だが、その持論を土台に革命やプロレタリア独裁の無効が説かれる。現代の社会学では通説的な考え方だが、これを一次大戦直後に確信をもち言い放つ炯眼。2017/01/28
ぷほは
5
官僚制のロジックは大雑把にまとめられているに過ぎないが、当時の社会主義を批判するにはこれで十分ということだろう。ロシア革命が歴史的反証として最大限利用されている時局性もあるが、これを以てしてウェーバーを日和見主義とかプチブル野郎と貶していた当時の社会主義者たちのお里が知れるというか。しかし、確かにこう批判されて怒る気持ちもわからなくはない。デュルケムの『社会分業論』の議論と付き合わせるのが面白いと思うのだが、訳者の興味・関心はそこにはないようだ。確かに名誉やシンジケートに関する議論には?とくる箇所も多い。2017/03/15