内容説明
相次ぐ企業の不正事件で犠牲となるのは常に、会社に「責任」を押しつけられる社員たちである。会社という「イエ」に忠誠を尽くすより、主体的な“個人”として働くことをめざすビジネスマンの理論武装のための教科書。
目次
第1章 「ビジネス・エシックス」とは何か
第2章 「コーポレート・ガバナンス」とは何か
第3章 米国流「ビジネス・エシックス」
第4章 日本流「ビジネス・エシックス」
第5章 日本経済新聞社という「イエ」
第6章 「腐敗」と「信頼」
第7章 「個人」と「公共性」
著者等紹介
塩原俊彦[シオバラトシヒコ]
1956年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。現在、高知大学助教授。専攻はロシア経済論
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感想・レビュー
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KAZOO
80
企業での個人の行動規範のようなものの根本についての議論が行われています。日経新聞の記者の告発などはマスコミが相手だけにその時だけで終わってしまいました。東芝事件もどうなるのかわかりません。法律には抵触しないものの実態は倫理違反のようなものが結構行われています。これは日本の特徴なのでしょう。法律ではきちんとしていない部分が多いので日本の場合はあいまいになるケースが多いということです。アメリカの場合はきちんと規定していないと悪いことばかりすることが多いのでしょう。文化の違いがありますよね。2016/01/30
壱萬参仟縁
11
除籍本。経営倫理学。10年前の本。契約を補うのは信認(40頁~)。米国流では、企業は契約の束と見なす傾向が高い(42頁)。日本は温情、義理、人情? 田舎は特にそうだが、なあなあというか、倫理や法よりも顔見知り、世間を優先している気もする。地方経営倫理の場合、法治国家の意味が問われる部分。日本では世間という規範(ノルム)が個人主義を潰している(119頁)。今では少し様相が変わっていることには注意が必要。剥き出しの競争社会ゆえ。内部告発もCSR意識を顕在化させてきた。だが特定秘密保護法案が足かせとなるだろう。2013/11/03
白義
4
ビジネスエシックスとは聞きなれない言葉だが、要は仕事、企業の倫理のこと。今後、企業に勤める人間としていかな倫理が必要かを、経営学だけでなく正統な政治哲学や倫理学、社会学までフルに駆使して考察する贅沢な本。その分話が広がりすぎか。結論は単純、企業が問題を起こしたら企業や世間に負けずしっかりと内部告発を行える個人こそビジネスエシックスの持ち主だというもの。個人の自立を阻む日本の企業の特殊性やビジネスエシックスを可能にする信頼の問題やソーシャルキャピタルの問題と、スタンダードに近代倫理的な企業論だ2012/07/19
スズツキ
3
川島武宜や阿部謹也が提唱したような日本社会の特殊性を見つめ直す本。冒頭の日経クーデターは端的にその問題が溢れているし、雪印事件では、丸山眞夫にならえば、雪印「であること」が社員が不正を「すること」を上回るという問題構造の逆転が喝破されている。結構書評は見かけるのに、あまり読まれていないようなので残念。2016/02/13
O. M.
2
企業倫理について考えるために読みましたが、とても難しい内容でした。池上彰さんのような解説を期待すると、難解さにひっくり返ります。内容には、日米での企業の在り方の違い、米国式企業統治をそのまま日本に持ってくることの愚、日本における「世間」の重要性など、随所に光る分析がありました。ただ「ではどうするか?」といった実用性は弱いかも。10年も前の本ですが、本書で提起されている、会社と個人のあるべき姿が全く実現できていない(と報道されている)日本の現況には暗澹たる気持ちにさせられます。2013/11/05
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