内容説明
勃興期の謎、富と栄光の黄金時代、そして君主・教皇への道―ルネサンスを演出した名族五百年の興亡。
目次
第1章 メディチ一族の形成
第2章 メディチ銀行の台頭―ジョヴァンニ・ディ・ビッチの時代
第3章 メディチ家の覇権確立―コジモ・イル・ヴェッキオの時代
第4章 メディチ家の「黄金時代」―ロレンツォ・イル・マニフィコの時代
第5章 メディチ家の追放と復権―君主制への道
第6章 君主としてのメディチ―フィレンツェ公からトスカーナ大公へ
第7章 メディチ家の衰退と滅亡
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
109
ルネサンス芸術のパトロン、メディチ家の勃興、繁栄、衰退の歴史をまとめた本。一気に読み通すことで一族としての印象が形づくられ、特にフィレンツェという都市国家との結びつきの強さを感じた。周囲が君主制の中、共和制を維持するお国柄が根源にあったと思う。黄金期のロレンツォも支配者だが形は崩していない。だが彼以降の世代は隣接する君主強国に翻弄された時代。そのためかスキャンダラスな面も多い。それでも終焉を迎える際、公国の独立及び美術品等を領地から持ち出さない約束を取り付ける。フィレンツェ人としての気風と気概を感じた。2023/06/09
k5
67
旅行で訪れただけですが、フィレンツェという街には大変よい印象を持っていて、この地を舞台にした物語を読んだり観たりしたいなあ、と思います。そんなわけで、辻邦生『春の戴冠』を読む前の予習として再読。コジモやロレンツォの有名人だけでなく、その子孫たちまでフォローしているありがたい本です。とくに萩尾望都の『王妃マルゴ』読んだばかりなので、カトリーヌとマリーの二人のフランス王妃のところを堪能しました。2021/03/12
まさむ♪ね
45
その名家の遺産はあまりに膨大、絢爛豪華、荘厳美麗。サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂、ベェッキオ宮殿、メディチ・リッカルディ宮殿、ピッティ宮殿、ウフィツィ美術館、フィレンツェの街を彩る建築物。ボッティチェリ、レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロ、あの巨匠があの天才が火花を散らしたルネサンス黄金期の名画たち。一介の商人が二度の追放という憂き目にあいながら、長きにわたり強大な権力を維持することができたのは武力ではなく文化芸術の力で国を治めようとしたから。ああフィレンツェ行きたい!2016/07/10
俊
24
フィレンツェに独裁的な体制を敷いたメディチ家の興亡を綴った新書。メディチといえばルネサンスのパトロンのイメージが強いが、本書もやはり芸術に関する記述が多い。自分は芸術には造詣が全く無いのでその辺りはななめ読みですませてしまったが、フィレンツェ・メディチ家の政治史は面白い。君主論をあわせて読むと一層楽しめそうだ。名実ともに君主となったコジモ1世の時代以降よりも、現代の政治家と専制君主の間のような独特のポジシションだったコジモ・イル・ヴェッキオやロレンツォの時代のほうにより魅力を感じた。2015/10/04
MUNEKAZ
20
メディチ家の盛衰を描いた一冊。新書で版を重ねているだけあって、読みやすく面白い。新興の一族がときに暴力に頼りながらも、金融界の第一人者に登り詰め、ついには都市国家フィレンツェの君主となる。銀行家から政治家、そしてヨーロッパの王族へというメディチ家の転身が、そのまま都市フィレンツェの運命ともリンクする素晴らしい構成。また美術史家の著作らしく、歴代当主のパトロン活動にも政治史と同じく分量を当てている。王族としては断絶の憂き目を見たが、メディチ家がフィレンツェに遺した財産は、今も都市に活力を与えている。2022/09/13
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