内容説明
「鎖国によって日本の文明化は遅れた」ことが定説となっているが、事実か。幕府は海外の情報を独占・管理し、それを的確に解析できるシステムを作った。江戸期の情報管理を再評価する。
目次
プロローグ 平和の時代
1 未知の世界へのアプローチ
2 海外情報収集のシステム化
3 異文化とのインターフェース
4 仮想体験の世界
5 広がるイマジネーション
6 パーセプション・ギャップの克服
7 双方向的コミュニケーションへの道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
にゃん吉
4
情報の観点から鎖国を分析した一冊。鎖国の意味を、海外への情報の発信を停止し、受信については、幕府が主体的に、情報の把握、管理を行う体制(垂直的ネットワーク)として捉え(情報源は限られているが、相応に的確な海外の情勢を一部の者は把握できる。)、その誕生、運用の様子から、長崎通詞、蘭学者、幕府の役人等々の系列で、私的な情報網(水平的ネットワーク)が誕生し、海外の情報が伝播する経過、幕末に向けて、公的な情報統制の体制が崩れ、情報の発信も行うようになり、鎖国が終焉を迎えるまでが叙述されています。 2022/09/07
OjohmbonX
4
江戸時代の鎖国を、海外に対して受信のみ発信なしの中央独占型の情報体制、という捉え方をする。前期が鎖国体制の構築、中期が洗練、後期が崩壊で、詳しく見せてくれる。構築段階でオランダ・イギリス・スペイン・ポルトガルの欧州4か国から最終的にオランダ一本に絞られる過程や、洗練段階で翻訳者の養成や、中国とオランダからの定期レポートをメインに漂流帰還者からのヒアリングで補足、実用技術は専門家に公開といった仕組みや、崩壊過程でロシアの脅威やアヘン戦争の衝撃から諸藩が独自ルートで情報を入手していく姿なんかが見られて楽しい。2017/03/10
ユウヤ
2
受信(積極的)と発信(消極的)の観点から、江戸時代の海外情報把握とその解釈を丁寧に語った力作。垂直的な流れを軸とする公的回路(幕府)による情報統制は、水平的な流れを可能にする私的回路(民間)により次第に崩され、やがて共存していく。私的回路とされる人々の聡明さに驚くと共に、幕府も受信メッセージを的確に解析するシステムを持っていたことを押さえておきたい。しかし、幕末から始まる双方向的コミュニケーションは現在でも日本人の苦手分野。改善されつつあるとはいえ、受信情報に耳を傾けながら、もっとあれこれ発信しましょう。2013/11/11
びーちゃん
0
江戸時代において外国の情報がどのように取得され,流通したかを記述する。鎖国政策が採られた間,外国の情報が少ないなかで,日本の知識人が外国,特にヨーロッパ諸国をどう考えていたかがわかる。評価32011/03/28




