内容説明
「民族浄化」という狂気のもと、蓄積された民族主義と武器が、かつての隣人を殺戮していく。わずか七三年で崩壊。戦争状態となった“自主管理・非同盟”の国家・旧ユーゴ。悲劇の歴史的背景を辿る。
目次
第1部 戦場からの報告(ボスニア・ヘルツェゴビナ分割戦争;スロベニア独立戦争;クロアチア戦争;コソボ・ユーゴ紛争の時限爆弾)
第2部 ユーゴ紛争の背景(民族を隔てるもの;なぜ、戦争になったのか;国際社会とユーゴ紛争)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ティス@考える豚
6
高校世界史の参考書では二ページ程度しか触られていなかったので、知るために。20年前の本なので2006年にユーゴスラビアという共同体が完全に崩壊する以前、つまり内戦が絶頂期にあった頃の現地レポーターが書いた一冊。非常に参考になる。20世紀最大の悲劇として語り継がれるアウシュビッツ及びナチスの絶滅政策、カンボジアを襲ったポル・ポト政権の強権支配、スターリンが行ったソ連の圧政。20世紀は我々日本人の知らない血で血を洗う生臭い闘争があった。日本ではユーゴスラビアで起きたことはあまりにも知られていない。悲しいね…。2013/01/02
ひなた
4
★4 映画アンダーグラウンドを観てから、ずっと読もうと思いつつ放置してしまっていた。ジャーナリストの作者によりユーゴ紛争のただ中で書かれたものであるため、当時の様子がリアルに描かれ貴重な資料となっている。反面局地的には決着を見ているものの、紛争自体は途中経過の状態であるため、全体像は掴みにくい。第一部は雑誌の記事を掲載していると思われ少しまとまりにかける。第二部では紛争の背景が書かれ、特に旧ユーゴ独特の民族観(事情?)に驚かされた。オンタイムでニュースを見ていたのに何もわかっていなかった。⇒2016/07/28
富士さん
4
流れで再読。全体の歴史の流れと著者が取材したエピソードを行きつ戻りつしながらグイグイ引き込む、プロの物書きらしい読ませる文章です。毎度のことですが、どんな暴力的で凄惨なフィクションも歴史の前ではかくも霞んで見えるのかと嘆息せざるを得ません。一時期にせよ教科書的なホッブス状態が現出してしまったということがワタシの日常をざわざわさせます。PKFが日和見主義を提唱されていたのを思い出しました。人々がもっと不真面目で、いい加減で、適当であれば、ここまでひどくはならなかったんじゃないかと、個人的には思うのですよ。2014/05/13
ぼけみあん@ARIA6人娘さんが好き
4
評判がよかったのでブクオフで過日購入、読んでみた。著者は元々ジャーナリストで、ユーゴ紛争の報を聞いて長年親しんだユーゴの取材のために退社、その取材結果をまとめた最初の著作。以後2冊ほど関連書を書いているようだが、ジャーナリストの書くものだけあって、類書に比べて非常によくまとまっているのだけど、如何せん現実が複雑な紛争だけに、残念ながらよく頭に入って来なかった。類書も含め再読の必要がありそうだ。2014/03/18
rbyawa
3
正直読んだ時点ですっかり時期が頭の中から抜け落ちていたが、ユーゴ紛争中の最大の悲劇、「スレブレニツァの虐殺」が1995年、ユーゴへの空爆が行われたコソボ紛争が1999年、一番最後に独立を宣言し、まだ認められていないコソボの件が2008年。けれどすでに、この本の出版年である1993年の時点で芽は出揃っているように思う。スロヴェニアの10日戦争の時点で、その後の運命なんて予想できたんだろうか。2010/01/24
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- 和書
- 迷宮捜査 光文社文庫