内容説明
長江下流域デルタ地帯、背後に広大な太湖、点在する湖沼、縦横に走る大小の運河、この水豊かな地に“大輪の花”のごとく栄えた古都・蘇州。その繁栄と衰微のさまをあとづけながら、東洋の水の都の運命を探る。
目次
第1章 開けゆく江南
第2章 水生都市の覚醒
第3章 華開く都市文化
第4章 近世への窓口
第5章 半開きの窓
第6章 しおれゆく華
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
23
上海に隣接する都市『蘇州』の歴史と都市の特徴を書いた一冊。エッセイ要素の強い歴史の本で蘇州が栄枯盛衰を繰り返してきたことの神秘性や清代末でも近代化が進まなかったという社会システムの停滞など気になる話が多かったので新たな疑問点を発見することができた。また、多くの橋がかけられている蘇州だが、交通量や荷物を運ぶ船のルートも考えて橋の掛け方を考えていたそうで興味深いです(広場や歓楽街エリアへ行く橋の数は増やす、船の交通があるところはアーチを工夫するなど)。2022/09/03
富士さん
4
再読。本書で紹介されている、市民たちの寄付で道を直したり、公共施設の整備に余念がない中国の都市像は、政治と権力に偏った中国史記述では、脇に追いやられがちな側面で、ヨーロッパ史では巧みに描かれるボトムアップ型の活動が、中国でもそれなりにあったことを教えてれます。しかし、根本的に、そのようなアプローチへの体系的な蓄積の欠如を感じざるを得ませんでした。一つ一つの事実をどう評価していいかわからないから、どんな魅力も豊かさも、結局は退廃や不自然という説教じみた結論に落ち着かざるを得なくなっているように思います。2016/09/16
うえ
3
「ブルデューは『ディスタンクシンオン』において、エリートの徹底的な検証を行った。この理論は、近年、中国の士大夫の考察に用いられている。文化エリートとしてのかれらの存在とその検証が、社会の動向を占い分析するものとして重要だからである…ただ歓楽都市蘇州を見る限り、都市エリートの創出は好むべき道へは向かっていなかったようである。そこにも、蘇州の限界があるといわざるを得ない」2016/10/26
.
0
「水のなかに根を張りたっぷりと養分を吸い上げて水上に可憐な華を咲かせる蓮に似たこの生態こそ水生都市.根は水路であり、養分を差し出すのが水路を活用して行われる生産と経済活動」水上に開く華--水上都市・蘇州を蓮になぞらえて説明されているところが滾りました。虫を妖しく魅せる蓮、その名も水生都市、行ってみたくなりました。 地球は水の星ですねえ2016/01/31
-
- 和書
- デトネーション現象