内容説明
几帳面なビジネスマンの不可解な無断欠勤。昇進をまえにしての失踪。優秀な学生の長期留年。無気力な現実逃避…。これまでの神経症にはない“奇妙な心の病”がふえている。何が彼らをそうさせるのか?隠された心のダイナミックスに分析のメスを入れる。
目次
序 「退却神経症」とは何か
第1章 サラリーマンの場合
第2章 大学生の場合
第3章 中・高校生の場合
第4章 女性の場合
第5章 無気力・無関心・無快楽の克服
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
香菜子(かなこ・Kanako)
35
退却神経症―無気力・無関心・無快楽の克服。笠原嘉先生の著書。優秀で真面目な子供が突然無気力で怠慢な問題児になったりすることは珍しくないこと。そういった突然の変化には心の病、精神疾患が潜んでいることが多い。退却神経症の存在を理解しておけば防げる悲劇があるはずです。2018/10/24
rubeluso
2
「明日は必ず会社へ行く。そう心に誓って床に就いても、朝起きにくい。眠いというのでもない。心が仕事の方へむかない。とくに今日嫌な人に会わねばならぬとか、今の仕事が特に厄介だといった現実的理由はない。新しい課題を前に逡巡しているのでもない。だから自分でもよくわからない」2017/02/27
茅野
1
貰い物の1冊。自分のことを言われているようでそわそわした。几帳面からの脱却、精神の休憩。2020/09/25
カラクリ
1
スチューデントアパシーの人は、自分から治療には向かわない。その通りだと思う。 今の大学において、講義をサボるのは割と一般的で、その中で自分が休んでたって、他の人と変わらないと思ってしまうし、周りもサボり癖が強いやつ、くらいにしか思わない。 でも、出ない理由まで比較するとたぶん、スチューデントアパシーとそうでない人は違うんだと思う。それに気づける環境にないのが今の大学だと思う。もっとこの病気の認知度を高める必要があると感じました。 現に自分がそうでしたので。2018/10/29
いのふみ
1
1988年の本。今では「新型うつ」とでも呼ばれるのだろうが、当時からこういう症状が発見されていたのだな。著者も自身で命名した症例名をつけており、世間ではまだ認知されていないといった感がある。その「分からなさ」が不思議な魅力を醸している。分析のみならず、著者の語りには良き意味で人を食ったともいえるユーモアがあり、そこも魅力。以下、不要な私見だが、こういうものは病理として治療してしまうものではなく、われわれの生に予め組み込まれている、“人生の不定愁訴”のようなものとして飼い馴らすべきようなものだろう。2015/10/26