内容説明
鳥葬と近親婚。火と闇の宗教。アフラ・マズダーとアンラ・マンユの徹底した善悪二元論の展開。神秘の宗教・ゾロアスター教の秘儀と思想を解説しつつ、現代思想に与えた影響をさぐる。
目次
１ ゾロアスター（誕生から啓示まで；伝道の成功と昇天）
２ 光と闇の二元論（思想の根底；人間の生き方；死後の世界）
３ 東西宗教への影響（最後の審判と救世主；天使と悪魔；大乗仏教から密教へ）
４ 秘教の伝統―ゾロアスター教と神秘主義
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
20
単純に好みの問題だけでしかないのだけれど世界のとらえ方としてなんでもかんでも出来る完全無欠な唯一神が光あれとか言い出すよりも、善悪二元論で構築された世界を弱き人々が揺蕩いながらも善に焦がれ善を目指すという方が好きだなあと。そんなゾロアスター教の世界観や他の宗教への影響などについて知ることができて面白かったです。善と同じくらいに強大な悪が存在するからこそ人はきっと強い意志で善を目指す。2017/07/22
十川×三（とがわばつぞう）
14
面白い。出口氏「哲学と宗教大全」で、ゾ～教が様々な宗教に影響を与えたと知り本書を手に取った。▼守護霊、護摩焚き、お盆、阿弥陀仏、の源流。▼”善7神vs悪7神”の考え方は魅力的。山田風太郎「甲賀忍法帖」は10vs10の忍者合戦で最高に面白い。紀元前700年前に、すでに発想があったとは。▼フレディー・マーキュリーの両親はゾ～教徒。2021/06/19
kanaoka 58
8
唯一神の概念に慣れていると善悪二元論(神)のゾロアスター教の概念が一見稚拙に見えるのだが、理屈で考えると、この世に悪が存在する事自体が創造主たる唯一神の善性の矛盾であり、悪の性質を自らに含有するような存在(絶対神)は拒否すべきという主張は納得できる。正義は人間が作ったものではなく、正義が人間を作った。人間の本性は善側(アフラ・マズダー側)にあるのだ。現代に残る宗教に多大な歴史的影響を与えてきた事実、さらにマニアックではあるが、神智学がゾロアスター教のパーツをオカルト的に多大に活用した事がよく理解できた。2016/04/13
海星梨
6
新書888八冊の七冊目。宗教学は目が滑るなあ……知らない横文字が並ぶからかな。というのもありますが、しょっぱなから時系列がイマイチ分からず「え？いま何の話してる？学術系のはずだけど冒頭のどこに結論書いてあったっけ？」と困惑しつつ。主題としては「ゾロアスター教が後発の宗教に影響を与えた」かな。しかし、後発がそれ以前の思想に影響を受けているのは当たり前で、ゾロアスター教成立が何の影響を受けているかの考察はなくて残念です。断定の説明文が続いて、根拠や理由についての言及がないのは宗教学の文の特徴なのでしょうか。2019/05/01
さえきかずひこ
6
ゾロアスター教については、松本清張の『火の路』を通じて関心を持った。東西宗教（キリスト教、イスラーム、仏教など）への影響について書かれた第3章と、近代の神秘主義（神智学協会とイルミ・クシュヌーム）に解釈されたゾロアスター教像についての第4章が、現代の読者の関心を強く引くように感じた。2016/01/09
