出版社内容情報
【内容紹介】
人工授精やフリーセックスによる家庭の否定、条件反射的教育で管理される階級社会――かくてバラ色の陶酔に包まれ、とどまるところを知らぬ機械文明の発達が行きついた“すばらしい世界”!人間が自らの尊厳を見失うその恐るべき逆ユートピアの姿を、諧謔と皮肉の文体でリアルに描いた文明論的SF小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
342
なんともシニカルなタイトルだ。人類は、死以外のあらゆる苦しみ(生・老・病)から解放され、毎日の日々は幸福に包まれている。ただし、生まれる段階からα・β・Γ・Δと等級分けがなされていて、それを超えることは絶対にない。α・βはまだしも、それ以下だと情報も、身体さえもが制限される社会。我々が大衆である限り、それはΓ以下というディストピア小説にもなりうる社会を描く。まずは、これが1932年に書かれたということに驚く。見事なまでの慧眼だ。なにしろ、こんな閉塞社会に我々はΓまたはΔとして暮らしているのだから。2016/04/14
星落秋風五丈原
44
【ガーディアン必読1000冊】何もかも予定されている未来って管理されていて素晴らしく見えるけどいつも恐ろしさを感じるんですよね。で書かれているもののうちいくつかは実現しているというおそろしき予見。2020/03/23
akira
44
まちライブラリー府立大本。 想像以上にすさまじい一冊だった。一九八四年を読んだ時の感覚をそっくりそのまま感じる日がくるとは。圧倒的なディストピアで心を掴まれ、読む手がとまらなかった。 オーウェルのそれの如き異常性に満ちた言葉が並ぶ。受け入れ難きものが、それを描ききった才能への恐怖と畏怖が混じりながら飛び込んでくる。今は呆然と読後の感傷に包まれる。 「物理化学的にいえばあらゆる人間は平等なんだよ」2019/11/19
GaGa
39
学生の頃図書室で借りて以来の再読。そのときと同じ講談社文庫で読めたのが嬉しい。ディストピア小説として真直球の作品。最近読んだクーンツのフランケンシュタインに出てきたので思わず古本屋で手に取ってしまった(笑)今読んでも全然面白いので未読の方は是非一度お読みください。2011/07/27
うらなり
28
ジョージ・オーエルの1984年とはまた違った切り口のデストピア小説。シェークスピアの作品の引用が多く、タイトルもそこからとったと思われる。シェークスピアを読み込んでいればもう少し楽しめたのかもしれない。野蛮人ジョンからみたら素晴らしい新世界に訪れたと思ったが、あまりにも味気なくて幻滅してしまう。2021/02/16