出版社内容情報
いせ ひでこ[イセ ヒデコ]
著・文・その他
内容説明
パリの路地裏に、ひっそりと息づいていた手の記憶。本造りの職人から少女へ、かけがえのないおくりもの。講談社出版文化賞絵本賞受賞。
著者等紹介
いせひでこ[イセヒデコ]
伊勢英子。画家、絵本作家。1949年生まれ。13歳まで北海道で育つ。東京芸術大学卒業。『マキちゃんのえにっき』で野間児童文芸新人賞、『水仙月の四日』で産経児童出版文化賞美術賞、『ルリユールおじさん』で講談社出版文化賞絵本賞を受賞する。宮沢賢治とゴッホの研究をライフワークとしており、スケッチの旅での出会いや実感を大切にする現場主義に徹した作品が多い。作品はフランスなど海外でも翻訳出版されている。海外を含め、各地での絵本原画やタブロー作品展示を通した絵本の普及にも力を注いでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
384
いせひでこさんの水彩画絵本。登場人物は2人だけ。主人公の女の子ソフィー(8歳くらいか)とルリユールおじさん(推定70歳)。ちなみにルリユールは本文の言葉でいえば「本のおいしゃさん」。この本で特徴的なのは、そのルリユールの工程が図解入りで示されていること。そして何よりパリの絵がいずれも見事にパリを表象していること。これほどにパリの空気感を伝える絵もそうそうあるものではない。でも主題を仮託されるのはアカシアの木。エンディングがまた素晴らしくいい。2023/03/20
やま
171
いせさんの素晴らしい本の再生の物語を、絵本で描いています。本を手に取り、絵だけを追って見ていきました。いせさんの絵は、青の使い方が素晴らしいです。2度、3度と絵を見ていきます。文字を読まなくても絵だけで物語が心の中で感じ取れます。女の子が大切にしている植物図鑑が、ルリユールの手職人としてのお爺さんの人生と、女の子の人生が重なっていきます。いせさんは「本は時代を超えてそのいのちを何度でもよみがえるものだと」言っています。ファンになってしまいました。2011.04発行。字の大きさは…大。🌿続く→2020/09/23
紫 綺
141
小さな女の子とルリユールおじさんが、本だけでなく心もルリユール(もう一度つなぐ)したんだね。2016/10/30
chiru
139
なんて心を打つ絵本だろう…。舞台はパリ。少女ソフィーは大切にしていた植物図鑑の修復をルリユールおじさんにお願いします。おじさんにとって製本や修復をすることは、だれかの幸せを願うこと。おじさんの手作業を興味深く見つめるソフィー。その姿におじさんは、かつて父親の手を観察した少年の自分を重ね「魔法の手を持てただろうか」と問う。その答えは、ソフィーの本が『特別』だったとわかる結末の、アカシアの木が教えてくれる。この絵本の何もかもが好き✨ わたしも、代わりのきかない大切な本があります。いつまでも大事にしたい。★52020/01/26
kanegon69@凍結中
126
ストーリーがとっても素敵です。かわいい少女がどうにかして自分の大切な「木の図鑑」を直せないか奔走する。昨今はデジタル化が進んでいたり、壊れた本は捨てられ、Amazonで翌日には配達される。物を大切にする心をこの絵本は優しく教えてくれます。おじいさんが大切に製本しなおし、美しく装幀しなおしたから、きっとこの少女は自分の植物への興味そのものも大切にされたと感じたのではないでしょうか。パリの小道、アパルトマン、冬の街の様子、そしてかわいい少女と職人のおじいさん、淡い水彩画がなんとも美しく、心に響く一冊です。2019/10/20