出版社内容情報
祖母の死後、雑司ヶ谷の朝食屋「きつね」を継いだ磯村悠佑、二十八歳。パワハラで心を病んだ彼にとって、祖母が遺したこの店は唯一の居場所だった。けれど現実は甘くない。祖母の頃の常連客は足を遠のかせ、店は閑古鳥が鳴いている。
良い朝食屋とは何か――。
必死に答えを探す悠佑だったが、その熱意が空回りし、お客に「自身がなさそうな店主」と口コミに書かれてしまう。試行錯誤を続ける悠佑の前に現れたのは、かつて常連だった地主の小宮山。祖母が作ってくれた朝ごはんを懐かしむ彼は、厳しくも温かい言葉を残していった。
「腕はいい。だが、あんたのその性格が客を遠ざけている」。
出産の不安を抱える霧江、正体を明かさない戸越、そして動けない祖母を支える女子高生の早苗。少しずつ店に集まり始めた訳ありな客たちと、甘辛く煮たお揚げのきつねご飯や、焼き魚とたっぷり野菜の味噌汁を囲みながら、悠佑は何かに気づき始める。居場所とは何か。人が求める温かさとは――。
これは、傷ついた心が、朝ごはんと共にほどけていく、再生の物語。
【目次】



