内容説明
「ねえ、秘密のアプリって知ってる?」いつものように教室の片隅にいると、楽しそうな女子たちの噂話が聞こえてきた。“過去を自由に変えられる”という夢のようなアプリ。みんな噂話だとわかっているけど「あったらどうする?」と話題が絶えない。もし僕だったらどんな過去を変えるだろう?きっと「僕を『普通』の人間にして下さい」こう願うかな…。次の日、いつものように登校すると―友人の三宮春乃が消えてしまっていた。何故だかみんな春乃のことを憶えてないようだ。まるで元からいなかったみたいに。「誰かが“アプリ”を使って、この世から春乃が存在した過去を消した?」―秘密のアプリは夢なんか与えない。その日から噂は現実となり、僕たちの『普通』は壊れていった。II Vクリエイターアワード小説部門“最優秀賞”受賞作。
著者等紹介
三輪・キャナウェイ[ミワキャナウェイ]
2000年生まれ。2021年『真っ白い殺人鬼』で「第3回II Vクリエイターアワード」の最優秀賞を受賞し、同作品でデビュー。人間の心の暗部、内に秘めた情念や苦悩を感性豊かな筆致で描く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sayuri
62
『第3回ⅡⅤクリエイターアワード』の最優秀賞受賞作品。2000年生まれの若い作家さんだけあってスマホアプリをモチーフにした物語は新鮮。「過去を自由に変えられる」夢のようなアプリ。もし自分だったら、過去のどの場面を変えようか思い浮かべながら読み始めたが、実はこのアプリ、そんな生易しいアイテムではなかった。突然消えてしまう者。善人の仮面が剥がれ本性が剥き出しになる者。正義と悪、そして『普通』の定義についても考えさせられる。リーダビリティの高い文章で、思春期ならではの自意識や承認欲求がストレートに伝わる作品。 2021/12/25
うまる
33
過去を変えられるアプリの話。ある日友人がこの世に存在しなくなってから、壊れていく日常と人間関係が面白いです。一体誰がそんなことを!って謎をひっぱらない、サクサク進む展開が良い。意外な死亡もあったし、他人を出し抜かないと希望をかなえられない設定も上手く活きていました。各キャラ視点が読めるのも楽しかったですね。特に鬼畜な人のパートとか(笑) こういう疑心暗鬼の中の攻防戦みたいな話は大好物なので、あっという間に読んでしまいました。これを前哨戦として、ぜひとも続編を出してほしいです。2022/01/18
kou
28
過去を変えられるアプリをめぐる物語。2転3転するジェットコースターのような展開に、何度、「えっ!?」って言いそうになったことか。「普通の定義」って何だろうと考えさせられた。変えたい過去は山のようにあるが・・・(笑)。でも、このアプリはいらないなぁ~。2022/01/04
みや
20
過去を自由に変えられるアプリによって同級生が消えていくホラー。アプリのルールは面白く、視点の切り替えが楽しく、血みどろ祭りで嬉しい。展開のスピードが早く、各キャラの重い過去や葛藤は丁寧に描かれ、青春が眩しい。設定やストーリーは好きな点ばかりなのに、文章が自分に全く合わなくて辛かった。「花の女子高生」「ホットな噂」などは、わざと古臭い言葉を使っているのだろうか。何か意図があるのかもしれないが私には分からず、地の文も会話文も苦手だった。設定や展開は本当に好きだし、清原さんの表紙もステキだったから、とても残念。2022/02/04
ぶっちゃ
7
衝撃を受けました。 学生時代以来、めっきり小説を読まなくなってましたが、清原さんが装画をされたと知り、思い切って購入。それから思わず一気読みしてしまいました。 たった一冊の本のはずなのに、多くの人物の人生背景が色鮮やかに描写されていて、それぞれがぶつかり合い、混じり合って物語が黒ずんでいく様は、読んでいて唖然とする他ありませんでした。 特に個人的に、双葉草太の章の最初にある詩的な表現と、吾妻結衣の激しさ、一条仁のエイリアンの解釈が物凄く脳裏に焼き付いています。 この小説のおかげでまた読書にハマれそうです。2021/10/26
-
- 和書
- 買えない運命